Mean Hero
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「なんだ。君が悟の幼馴染の子だったんだね」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。カツアゲだのヤンキーだのめちゃくちゃ失礼な真似を」
「いいっていいって。そんな謝らなくても」
大袈裟だなと朗らかに笑う、元前髪ヤンキーこと、夏油傑くん。
もう完全に見た目で判断していた。話してみたら、穏やかで落ち着きがあって、とてもいい人だった。悟くんの同期で、私のことは悟くんを通して存在は認知していたとのこと。
そして、その隣にいる煙草をプカプカと吹かす、ボブヘアーの少女は家入硝子ちゃん。彼女もまた、夏油くんと同じく、同期らしい。
黒髪で人懐っこそうな笑顔を浮かべるのは灰原くん。金髪頭で切長な蒼い瞳。どことなく大人びた、クールな印象を受けるのは七海くん。二人は悟くんたちの後輩とのこと。
「へぇ、グズにこんな純朴そうな子がいるだなんて。絶対パシリにされてるでしょ、アンタ」
「え、」
煙草を吸う手を口元から離し、「図星でしょ?」とニヤリとされる。肯定したいですとも。だけど、すぐ隣には悟くんもいる訳で、堂々と「はい、そうです。パシリにされてます。助けてください」なんて答えられる度胸などなく、苦笑いしか出来ずにいると、「大変だねー」と伏し目がちに、喉を鳴らすよう笑った。紫煙に巻かれるその顔は、とても同い歳とは思えないくらい、大人びていた。
「そういえば俺の昼飯どこ」
「そうだった。ごめんごめん。急だったから、昨日の残りとか冷蔵庫にあったものを適当に詰めてきたけど」
カバンからタッパーを取り出し、はいと渡す。
良かった、大惨事にならなくて。カバンの中が煮物臭くなったら最悪だ。
「わざわざこんなところまで届けてもらって。ダメじゃないか。彼女だって学校があっただろうに」
「いや、大丈夫です。今日はテスト最終日で午前中で帰れたので」
「だってさ。それに帰宅部のお前にはちょうどいい運動になっただろ」
「うっ、痛いところを」
「それにコイツの飯めっちゃうめぇんだよ。今度お前らも来いよ」
「それはどうも……じゃなくて!私、いつからデリバリー配達員になったんですか!あとウチは定食屋じゃない!」
そんな、「俺さぁ、いい店知ってんだよぉ、今度飲みに行く?」というセリフが似合うサラリーマンみたいなことを言わないでくださいよ。
でも、この人のことだから、本当に連れてきそうで怖い。「任務ここら辺だったから、近くに寄った。なんか食べさせろ」とか言って、問答無用で上がり込んできそう。まあ、たとえ来たとしても、おじいちゃんもおばあちゃんも、「あらまあ、悟くん?大きくなったねえ。さあさ、たくさん食べてって~」と追い返すところか、むしろ歓迎ムードになるだろうけど。
本当、おじいちゃんおばあちゃんの前ではめちゃくちゃ良い子ぶるんだから。彼の演技力恐るべし。
そんなことを考えていると、一年生の一人、灰原くんが興味深そうにタッパーを見つめているのに気がついた。
「えっと……よかったら食べる?」
「え、いいんですか?」
「まとめて持ってきちゃったから。それにウチの家族みんな少食で作っても余っちゃうんだ」
「じゃあ、遠慮なくいただきます!」
「……あ、ちょっと待ってね、パックに小分けして持ってきたから、これは卵焼きで、こっちは筑前煮……んで、これは……。あと確かコンビニでもらって溜まりに溜まった割り箸があったはず……あった!おしぼりもどうぞ」
サブバッグの中から割り箸を何膳か取り出せば、隣で見ていた悟くんが、「ドラえもんかよ」と呟いては鼻で笑った。
明らかに馬鹿にしているって顔だ。じゃあ、こっちもその例えをそっくりそのまま使わせてもらうのであれば、君は空き地の土管でリサイタルするオレンジ服のガキ大将だ。
「めちゃくちゃ美味しいです!」
灰原くんの声で妄想の世界から現実に引き戻される。
「ほ、本当?!良かった、口にあったみたいで。他にも色々と詰めてきたから、よかったら、もう全部食べちゃっても」
「本当ですか?!やった!ねね!七海も食べてみなよ」
「何を言っているんだ。少しは遠慮しないと」
「そんな全然お気になさらず。七海くんもどうぞどうぞ」
「……じゃあ、少しだけ」
と、灰原くんの押しに押される七海くん。若干腑に落ちない様子で割り箸を受け取り、筑前煮を口に入れると、切れ長の瞳が大きく広がった。
「とても美味しい……です」
張り詰めた沈黙を破った。その途端、一瞬だけど、七海くんの表情が少し和らいだように見えた。
良かった。灰原くんと比べ、クールで、どことなく食べ物にはこだわりがありそうな雰囲気を漂わさせる彼から出た合格サインに安堵する。
「えー、七海が言うなら間違いかも。一口貰おっかなー。卵焼きいい?」
「確かに。私も少しいただいてもいいかな?」
「あ、うん!もちろん」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。カツアゲだのヤンキーだのめちゃくちゃ失礼な真似を」
「いいっていいって。そんな謝らなくても」
大袈裟だなと朗らかに笑う、元前髪ヤンキーこと、夏油傑くん。
もう完全に見た目で判断していた。話してみたら、穏やかで落ち着きがあって、とてもいい人だった。悟くんの同期で、私のことは悟くんを通して存在は認知していたとのこと。
そして、その隣にいる煙草をプカプカと吹かす、ボブヘアーの少女は家入硝子ちゃん。彼女もまた、夏油くんと同じく、同期らしい。
黒髪で人懐っこそうな笑顔を浮かべるのは灰原くん。金髪頭で切長な蒼い瞳。どことなく大人びた、クールな印象を受けるのは七海くん。二人は悟くんたちの後輩とのこと。
「へぇ、グズにこんな純朴そうな子がいるだなんて。絶対パシリにされてるでしょ、アンタ」
「え、」
煙草を吸う手を口元から離し、「図星でしょ?」とニヤリとされる。肯定したいですとも。だけど、すぐ隣には悟くんもいる訳で、堂々と「はい、そうです。パシリにされてます。助けてください」なんて答えられる度胸などなく、苦笑いしか出来ずにいると、「大変だねー」と伏し目がちに、喉を鳴らすよう笑った。紫煙に巻かれるその顔は、とても同い歳とは思えないくらい、大人びていた。
「そういえば俺の昼飯どこ」
「そうだった。ごめんごめん。急だったから、昨日の残りとか冷蔵庫にあったものを適当に詰めてきたけど」
カバンからタッパーを取り出し、はいと渡す。
良かった、大惨事にならなくて。カバンの中が煮物臭くなったら最悪だ。
「わざわざこんなところまで届けてもらって。ダメじゃないか。彼女だって学校があっただろうに」
「いや、大丈夫です。今日はテスト最終日で午前中で帰れたので」
「だってさ。それに帰宅部のお前にはちょうどいい運動になっただろ」
「うっ、痛いところを」
「それにコイツの飯めっちゃうめぇんだよ。今度お前らも来いよ」
「それはどうも……じゃなくて!私、いつからデリバリー配達員になったんですか!あとウチは定食屋じゃない!」
そんな、「俺さぁ、いい店知ってんだよぉ、今度飲みに行く?」というセリフが似合うサラリーマンみたいなことを言わないでくださいよ。
でも、この人のことだから、本当に連れてきそうで怖い。「任務ここら辺だったから、近くに寄った。なんか食べさせろ」とか言って、問答無用で上がり込んできそう。まあ、たとえ来たとしても、おじいちゃんもおばあちゃんも、「あらまあ、悟くん?大きくなったねえ。さあさ、たくさん食べてって~」と追い返すところか、むしろ歓迎ムードになるだろうけど。
本当、おじいちゃんおばあちゃんの前ではめちゃくちゃ良い子ぶるんだから。彼の演技力恐るべし。
そんなことを考えていると、一年生の一人、灰原くんが興味深そうにタッパーを見つめているのに気がついた。
「えっと……よかったら食べる?」
「え、いいんですか?」
「まとめて持ってきちゃったから。それにウチの家族みんな少食で作っても余っちゃうんだ」
「じゃあ、遠慮なくいただきます!」
「……あ、ちょっと待ってね、パックに小分けして持ってきたから、これは卵焼きで、こっちは筑前煮……んで、これは……。あと確かコンビニでもらって溜まりに溜まった割り箸があったはず……あった!おしぼりもどうぞ」
サブバッグの中から割り箸を何膳か取り出せば、隣で見ていた悟くんが、「ドラえもんかよ」と呟いては鼻で笑った。
明らかに馬鹿にしているって顔だ。じゃあ、こっちもその例えをそっくりそのまま使わせてもらうのであれば、君は空き地の土管でリサイタルするオレンジ服のガキ大将だ。
「めちゃくちゃ美味しいです!」
灰原くんの声で妄想の世界から現実に引き戻される。
「ほ、本当?!良かった、口にあったみたいで。他にも色々と詰めてきたから、よかったら、もう全部食べちゃっても」
「本当ですか?!やった!ねね!七海も食べてみなよ」
「何を言っているんだ。少しは遠慮しないと」
「そんな全然お気になさらず。七海くんもどうぞどうぞ」
「……じゃあ、少しだけ」
と、灰原くんの押しに押される七海くん。若干腑に落ちない様子で割り箸を受け取り、筑前煮を口に入れると、切れ長の瞳が大きく広がった。
「とても美味しい……です」
張り詰めた沈黙を破った。その途端、一瞬だけど、七海くんの表情が少し和らいだように見えた。
良かった。灰原くんと比べ、クールで、どことなく食べ物にはこだわりがありそうな雰囲気を漂わさせる彼から出た合格サインに安堵する。
「えー、七海が言うなら間違いかも。一口貰おっかなー。卵焼きいい?」
「確かに。私も少しいただいてもいいかな?」
「あ、うん!もちろん」