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事の発端は一本の電話だった。
中間テスト最終日の今日。
最終科目の世界史の試験を終えた私は長かった試験勉強から解放され、しかも半日で帰れることもあり、もう天にも登る気分だった。
バイトも委員会もない。こんな日は家でゴロゴロしながら、お菓子食べて、レンタルしてきたビデオでも一気見してやろうと普段できやしないことをしてやろうと企んでいると、ポケットに振動が走った。
生憎、ホームで電車を待っていたため、すぐに出ることができた。いや、今思えば、それが間違いだった。でちゃいけなかったのだ。
「もしも……」
「瑞希、腹減った」
いや、私にはそんなこと言われても。
「つーことで、何か作って持ってきて」
「はい?!」
「場所は東京都立呪術高等専門学校まで。電車乗って、バスで一本だから。方向音痴なお前でも楽勝楽勝」
「あの、悟くん?そういう問題じゃなくて、えっ、ちょっと」
「んじゃ、よろしく」
ブチっという無機質な音だけが耳に残る。
私……、いつから出前始めたっけ?
◆◇◆
そんなこんなで、山奥という山奥をバス停から歩いている。
逆らったは逆らったで後が怖いので仕方なく、弁当を作って持っていくことに。
とまぁ、そんなこんなでまともに補装されていない山道をトボトボと歩いている今に至る。
結構歩いているけど、こんなところに本当に学校なんてあるの?バスで一本。すぐそことか行っていたけど、ぜんぜんすぐそことは思えない。
これでドッキリのプラカードとかが置いてあったら、流石の悟くん相手であっても、キレ散らかす覚悟はできている。
家でゴロゴロしたかった恨み辛みを込めた渾身の一撃をクリティカルヒットさせてやる!
なんて、たとえ地球の自転が変わったとしても、できないことを妄想しながら、指定された場所に辿り着いた。が、目の前にはいかにも厳しい空気をこれでもかとばかりに放つ大きな門。
「……ここであってるの……?」
返してくれる相手もいないのに独り言がこぼれ落ちる。
これ本当に学校?お寺とかじゃなくて?
でも、きちんと、「東京都立呪術高等専門学校」と書かれた木札があるし。
入ろうにも入りずらい雰囲気に足がすくむ。
なんというか、ものすごい場違い感。
あ、そうだ。悟くんに連絡すればいいんだ。
そうだよ。最初からそうすれば。なんでそんな単純なことを思いつかなかったんだと己の頭の悪さに打ちひしがれながら、携帯の電話帳を開いていると、「あの」と突然背後から声をかけられた。
聴き心地の良い、優しげな声にふいと振り向けば、ガクンと顎が外れた。そこには長髪、ピアス、大工さんが着るようなズボンを纏った背の高い、切長の目の男の人がこちらを見下ろしていた。
随分とファンキーでいらっしゃる。見た目で人を判断するな!っておじいちゃんに言われてたけど、無理!無理だって!
「部外者の方……ですよね?」
「えっと、はい。そうなんですけど、ちょっと用事ありまして」
「ああ、そうだったんですね。それなら案内しますよ」
案内?体育館裏に連れて行くの間違いではなくて?
間違いない。にっこりと笑顔を浮かべていらっしゃるが、これは罠に違いない。人気のない体育館裏に連れて行かれ、「おら、ジャンプしろや」と脅される、俗に言う「カツアゲ」なるものをされるに違いない。
「い、いえ、そんなそこまでしてもらわらなくても大丈夫です!すぐに終わるので、お気遣いなく……!」
「え、だけど」
「傑ー、こんなところで突っ立って何してんの?邪魔なんだけど……あれ、誰この子。アンタの知り合い?」
私の中の第六感が警報の鐘をガンガンと鳴らしているなか、さらに追い討ちをかけるように男の人の後ろからヒョイと女の子が現れた。
至って普通な女の子。が、手に持っているものを見た途端、それは一気に打ち壊された。
「また煙草吸っているのかい?先生に見られたら面倒だぞ?」
「いいっていいって。バレなきゃ大丈夫だって」
と、限りなく黒に近い灰色発言をしながらプカプカと煙をふかす彼女に口があんぐりと開きそうだった。
煙草少女といい、お団子ヤンキーくんといい、とんでもない不良学校に来てしまったみたい。高専とか言っていたけど、更生施設の間違いなのでは?ああ、だから、人気のないこんな山奥にあるのか。
なるほど、なるほど……じゃない。納得している場合じゃないでしょうが。目の前には強そうな……ここは、仮に不良AとBと名付けておこう。
不良AとBにカツアゲされる前に早く撤退せねば。その為には……話に夢中になっている今を見計らって、さっさと逃げるべし!そして、さっさと悟くんを見つけ、昼食を届けるべし!そして、さっさと帰るべし!
「お前、それ犯罪者が言うセリフだぞ?」
「犯罪者ツラしてる傑に言われてもねぇ。説得力皆無だわ」
「そんなに人相悪い顔してるか?硝子もそこまで人のこと言えないと……あれ、さっきの子は?」
ついさっきまでいたのにと、姿が見当たらないことに気がついた傑に「ん、」と煙草を咥えたまま指し示す硝子の視線の先には校舎の方へ走っていく瑞希の小さな後ろ姿が見えた。咄嗟に呼び止めるが、距離があってか届かない。
「あーあ。アンタの顔が怖くて逃げたんだよ。かわいそ」
「いやいや、お前の煙草のせいだって。というか、部外者を彷徨かせたらマズくないか。追いかけた方がいいんじゃ」
「そーだね。傑、よろしく。せいぜい警察呼ばれないようにね、ファイト」
「喫煙していたことを先生にチクろうかな」
「お前、ほんとにクズだわ」
中間テスト最終日の今日。
最終科目の世界史の試験を終えた私は長かった試験勉強から解放され、しかも半日で帰れることもあり、もう天にも登る気分だった。
バイトも委員会もない。こんな日は家でゴロゴロしながら、お菓子食べて、レンタルしてきたビデオでも一気見してやろうと普段できやしないことをしてやろうと企んでいると、ポケットに振動が走った。
生憎、ホームで電車を待っていたため、すぐに出ることができた。いや、今思えば、それが間違いだった。でちゃいけなかったのだ。
「もしも……」
「瑞希、腹減った」
いや、私にはそんなこと言われても。
「つーことで、何か作って持ってきて」
「はい?!」
「場所は東京都立呪術高等専門学校まで。電車乗って、バスで一本だから。方向音痴なお前でも楽勝楽勝」
「あの、悟くん?そういう問題じゃなくて、えっ、ちょっと」
「んじゃ、よろしく」
ブチっという無機質な音だけが耳に残る。
私……、いつから出前始めたっけ?
◆◇◆
そんなこんなで、山奥という山奥をバス停から歩いている。
逆らったは逆らったで後が怖いので仕方なく、弁当を作って持っていくことに。
とまぁ、そんなこんなでまともに補装されていない山道をトボトボと歩いている今に至る。
結構歩いているけど、こんなところに本当に学校なんてあるの?バスで一本。すぐそことか行っていたけど、ぜんぜんすぐそことは思えない。
これでドッキリのプラカードとかが置いてあったら、流石の悟くん相手であっても、キレ散らかす覚悟はできている。
家でゴロゴロしたかった恨み辛みを込めた渾身の一撃をクリティカルヒットさせてやる!
なんて、たとえ地球の自転が変わったとしても、できないことを妄想しながら、指定された場所に辿り着いた。が、目の前にはいかにも厳しい空気をこれでもかとばかりに放つ大きな門。
「……ここであってるの……?」
返してくれる相手もいないのに独り言がこぼれ落ちる。
これ本当に学校?お寺とかじゃなくて?
でも、きちんと、「東京都立呪術高等専門学校」と書かれた木札があるし。
入ろうにも入りずらい雰囲気に足がすくむ。
なんというか、ものすごい場違い感。
あ、そうだ。悟くんに連絡すればいいんだ。
そうだよ。最初からそうすれば。なんでそんな単純なことを思いつかなかったんだと己の頭の悪さに打ちひしがれながら、携帯の電話帳を開いていると、「あの」と突然背後から声をかけられた。
聴き心地の良い、優しげな声にふいと振り向けば、ガクンと顎が外れた。そこには長髪、ピアス、大工さんが着るようなズボンを纏った背の高い、切長の目の男の人がこちらを見下ろしていた。
随分とファンキーでいらっしゃる。見た目で人を判断するな!っておじいちゃんに言われてたけど、無理!無理だって!
「部外者の方……ですよね?」
「えっと、はい。そうなんですけど、ちょっと用事ありまして」
「ああ、そうだったんですね。それなら案内しますよ」
案内?体育館裏に連れて行くの間違いではなくて?
間違いない。にっこりと笑顔を浮かべていらっしゃるが、これは罠に違いない。人気のない体育館裏に連れて行かれ、「おら、ジャンプしろや」と脅される、俗に言う「カツアゲ」なるものをされるに違いない。
「い、いえ、そんなそこまでしてもらわらなくても大丈夫です!すぐに終わるので、お気遣いなく……!」
「え、だけど」
「傑ー、こんなところで突っ立って何してんの?邪魔なんだけど……あれ、誰この子。アンタの知り合い?」
私の中の第六感が警報の鐘をガンガンと鳴らしているなか、さらに追い討ちをかけるように男の人の後ろからヒョイと女の子が現れた。
至って普通な女の子。が、手に持っているものを見た途端、それは一気に打ち壊された。
「また煙草吸っているのかい?先生に見られたら面倒だぞ?」
「いいっていいって。バレなきゃ大丈夫だって」
と、限りなく黒に近い灰色発言をしながらプカプカと煙をふかす彼女に口があんぐりと開きそうだった。
煙草少女といい、お団子ヤンキーくんといい、とんでもない不良学校に来てしまったみたい。高専とか言っていたけど、更生施設の間違いなのでは?ああ、だから、人気のないこんな山奥にあるのか。
なるほど、なるほど……じゃない。納得している場合じゃないでしょうが。目の前には強そうな……ここは、仮に不良AとBと名付けておこう。
不良AとBにカツアゲされる前に早く撤退せねば。その為には……話に夢中になっている今を見計らって、さっさと逃げるべし!そして、さっさと悟くんを見つけ、昼食を届けるべし!そして、さっさと帰るべし!
「お前、それ犯罪者が言うセリフだぞ?」
「犯罪者ツラしてる傑に言われてもねぇ。説得力皆無だわ」
「そんなに人相悪い顔してるか?硝子もそこまで人のこと言えないと……あれ、さっきの子は?」
ついさっきまでいたのにと、姿が見当たらないことに気がついた傑に「ん、」と煙草を咥えたまま指し示す硝子の視線の先には校舎の方へ走っていく瑞希の小さな後ろ姿が見えた。咄嗟に呼び止めるが、距離があってか届かない。
「あーあ。アンタの顔が怖くて逃げたんだよ。かわいそ」
「いやいや、お前の煙草のせいだって。というか、部外者を彷徨かせたらマズくないか。追いかけた方がいいんじゃ」
「そーだね。傑、よろしく。せいぜい警察呼ばれないようにね、ファイト」
「喫煙していたことを先生にチクろうかな」
「お前、ほんとにクズだわ」