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「こ、これがお銀座のミルフィーユ……!すごい、こんなたくさんカスタードが!苺も大きくて、この挟んでるパイ生地もサクサクで美味しい……!」
「うっわ。食べながら話すなよ。犬かよ」
あからさまに眉間に皺を寄せる悟くん。
連れてこられたのは銀座の老舗喫茶店。
ザ・高級ですとでも言わんばかりの真紅のカーペットからケーキや紅茶が注がれた食器に手にしている銀のフォークまで。全てにおいて、豪華絢爛という称号が似合う。
そんな恐ろしく場違いな空間の中、ふるふると震えていたが、この店の名物である苺ミルフィーユを口にした途端、張り詰めた緊張が飛んでいってしまった。
「その呪術高専って、どんなことしてるの?」
「内緒」
「もしかして、企業秘密的な何かがある感じ……?」
「ううん。お前に言っても、わかんねーだろ。馬鹿だから」
「うっ……」
「烏帽子だとか釈だとか言ってやがる次元の奴に言っても意味ねえだろ」
「あれは無いわ」とケーキが刺さったフォークを片手にクククと肩を震わせる悟くん。
週末の疲れがどっと押し寄せてくる金曜の午後に食べるケーキと紅茶はさぞ美味かろうと思っていたのに、気のせいかな。やけに苦くて酸っぱく感じるんですけど。
「で、瑞希はどう?学校。楽しい?」
「あ、うん。新しいクラスにも慣れて、お弁当を一緒に食べる友達もなんとかできて、なんとか授業にもついていけそう」
「ふーん。そう。良かったじゃん」
「おかげさまで。悟くんは?進級したことで、任務を任せられることが増えたとか」
「別に。それと言って対して変わんない」
私がのうのうと教室で授業を受けているときだって、悟くんは危険な任務をまっとうしているんだ。そう思うと同じ学生、同い年なのになんだかとても遠い人のように感じてならない。
「……くれぐれも気をつけてね。無理はしないでね。危ない時はまず自分の身を一番に考えて」
「何?俺そんな貧弱そうに見えんの?」
「いや、そういうわけじゃ。話を聞く限り、命懸けな仕事なんだろうなって。そう思うと、心配だなって」
カップをソーサーに置き、両手を膝の上に乗せる。
呪術師の任務は命懸けだと聞いた。常に死と隣り合わせ。いつ死んでもおかしくない仕事だと。
非術師の私がとやかく言う権利はない。でも、やっぱり心配だ。それにもう、身近な人を失うのは嫌だ。
死んだお父さんとお母さんのように。悟くんも突然いなくなっちゃったりなんかしたらと考えるだけで、不安で怖くて仕方ない。
嫌な想像を頭の中をぐるぐると渦巻かせていると、突然、額に衝撃が走った。
「痛っ……!」
「バーカ。何勝手に湿っぽい顔してんだよ。せっかくのケーキが台無しじゃん」
「だとしても、いきなりデコピンは酷いよ」
「そんななよっちいお前に心配されるとか。どんだけ俺、ナメられてんだよ」
「別にナメてなんかいないよ。ただ私は」
「言っておくけど、俺強いから。瑞希が想像している以上に」
「そう簡単にくたばってたまるかよ」とすんとした顔でそう告げる悟くん。
わお、なんという自信。有り余りすぎて、地球が余分に回転しちゃいそうな勢いだ。
そのあと、人生に一度とない優雅なアフターヌーンティーを楽しんだあと、会計という現実が押し寄せてきた。
高いとわかっていたけど、紅茶一杯で千円は打撃が強い。加えてケーキセットとなると余裕で五千円近くまで跳ね上がった。
ま、まぁ、いいや。こう言う時の為にバイトを頑張ってきたんだから。
意を決して財布から樋口さんをテーブルの上に出そうとすれば、悟くんが「もう会計は済ました」と言ってきた。
「いつの間に……。あ、ごめん。今細かいお金がないから、五千円しか渡せないや。帰ったら小銭も用意するから明日に渡すね」
「いーよ、そんなの。俺の方から誘ったんだし」
今日は俺の奢りだと言って、悟くんは椅子から立ち上がると、颯爽と店を出て行ってしまった。
ぼうっとしている場合じゃない。カバンを掛け、すぐさま彼の後を追いかける。
「ごめんね、奢ってもらったりなんかしちゃって」
「気にすんなって。美味かったんだろ?」
「それはそうだけど。あんな美味しいケーキ、生まれて初めて食べたかもしれない。だけど、奢られるなんて予想外過ぎて」
「ってことで、次は瑞希の番ね」
「え?」
「今度はお前が俺にどっか美味しい店に連れて行く番。クソ不味いところ紹介したら、タダじゃおかねぇから」
「え、ちょっと、そんないきなりすぎやしませんか?!」
「そしてもちろん、瑞希の奢りね。今回奢ってやったんだから、それ相応の対価を払うのが礼儀ってもんだと思いますけど」
「う……」
まんまと借りを作られてしまった……。
期待してるねーとワザとらしい笑顔を貼り付ける悟くんに私はぐうの音も出なかった。
やっぱり、お銀座って怖い。そして、悟くんも怖い。
「うっわ。食べながら話すなよ。犬かよ」
あからさまに眉間に皺を寄せる悟くん。
連れてこられたのは銀座の老舗喫茶店。
ザ・高級ですとでも言わんばかりの真紅のカーペットからケーキや紅茶が注がれた食器に手にしている銀のフォークまで。全てにおいて、豪華絢爛という称号が似合う。
そんな恐ろしく場違いな空間の中、ふるふると震えていたが、この店の名物である苺ミルフィーユを口にした途端、張り詰めた緊張が飛んでいってしまった。
「その呪術高専って、どんなことしてるの?」
「内緒」
「もしかして、企業秘密的な何かがある感じ……?」
「ううん。お前に言っても、わかんねーだろ。馬鹿だから」
「うっ……」
「烏帽子だとか釈だとか言ってやがる次元の奴に言っても意味ねえだろ」
「あれは無いわ」とケーキが刺さったフォークを片手にクククと肩を震わせる悟くん。
週末の疲れがどっと押し寄せてくる金曜の午後に食べるケーキと紅茶はさぞ美味かろうと思っていたのに、気のせいかな。やけに苦くて酸っぱく感じるんですけど。
「で、瑞希はどう?学校。楽しい?」
「あ、うん。新しいクラスにも慣れて、お弁当を一緒に食べる友達もなんとかできて、なんとか授業にもついていけそう」
「ふーん。そう。良かったじゃん」
「おかげさまで。悟くんは?進級したことで、任務を任せられることが増えたとか」
「別に。それと言って対して変わんない」
私がのうのうと教室で授業を受けているときだって、悟くんは危険な任務をまっとうしているんだ。そう思うと同じ学生、同い年なのになんだかとても遠い人のように感じてならない。
「……くれぐれも気をつけてね。無理はしないでね。危ない時はまず自分の身を一番に考えて」
「何?俺そんな貧弱そうに見えんの?」
「いや、そういうわけじゃ。話を聞く限り、命懸けな仕事なんだろうなって。そう思うと、心配だなって」
カップをソーサーに置き、両手を膝の上に乗せる。
呪術師の任務は命懸けだと聞いた。常に死と隣り合わせ。いつ死んでもおかしくない仕事だと。
非術師の私がとやかく言う権利はない。でも、やっぱり心配だ。それにもう、身近な人を失うのは嫌だ。
死んだお父さんとお母さんのように。悟くんも突然いなくなっちゃったりなんかしたらと考えるだけで、不安で怖くて仕方ない。
嫌な想像を頭の中をぐるぐると渦巻かせていると、突然、額に衝撃が走った。
「痛っ……!」
「バーカ。何勝手に湿っぽい顔してんだよ。せっかくのケーキが台無しじゃん」
「だとしても、いきなりデコピンは酷いよ」
「そんななよっちいお前に心配されるとか。どんだけ俺、ナメられてんだよ」
「別にナメてなんかいないよ。ただ私は」
「言っておくけど、俺強いから。瑞希が想像している以上に」
「そう簡単にくたばってたまるかよ」とすんとした顔でそう告げる悟くん。
わお、なんという自信。有り余りすぎて、地球が余分に回転しちゃいそうな勢いだ。
そのあと、人生に一度とない優雅なアフターヌーンティーを楽しんだあと、会計という現実が押し寄せてきた。
高いとわかっていたけど、紅茶一杯で千円は打撃が強い。加えてケーキセットとなると余裕で五千円近くまで跳ね上がった。
ま、まぁ、いいや。こう言う時の為にバイトを頑張ってきたんだから。
意を決して財布から樋口さんをテーブルの上に出そうとすれば、悟くんが「もう会計は済ました」と言ってきた。
「いつの間に……。あ、ごめん。今細かいお金がないから、五千円しか渡せないや。帰ったら小銭も用意するから明日に渡すね」
「いーよ、そんなの。俺の方から誘ったんだし」
今日は俺の奢りだと言って、悟くんは椅子から立ち上がると、颯爽と店を出て行ってしまった。
ぼうっとしている場合じゃない。カバンを掛け、すぐさま彼の後を追いかける。
「ごめんね、奢ってもらったりなんかしちゃって」
「気にすんなって。美味かったんだろ?」
「それはそうだけど。あんな美味しいケーキ、生まれて初めて食べたかもしれない。だけど、奢られるなんて予想外過ぎて」
「ってことで、次は瑞希の番ね」
「え?」
「今度はお前が俺にどっか美味しい店に連れて行く番。クソ不味いところ紹介したら、タダじゃおかねぇから」
「え、ちょっと、そんないきなりすぎやしませんか?!」
「そしてもちろん、瑞希の奢りね。今回奢ってやったんだから、それ相応の対価を払うのが礼儀ってもんだと思いますけど」
「う……」
まんまと借りを作られてしまった……。
期待してるねーとワザとらしい笑顔を貼り付ける悟くんに私はぐうの音も出なかった。
やっぱり、お銀座って怖い。そして、悟くんも怖い。