八「勘右衛門！大変だ！」
勘「八左ヱ門。そんなに慌ててどうした？」
八「くのたまの先輩が怪我（けが）して医務室運ばれたって」
勘「なんだって？！先輩の怪我って…」
八「捻挫（ねんざ）！結構ひどいらしい」
勘「捻挫か…分かった。教えてくれてありがとうな、八左ヱ門」
八「え？あ、うん…」

八「おほー…勘ちゃんってば冷静…」

医務室

勘「失礼しまーす」
伊「あれっ。今度は勘右衛門か」
勘「今日は千客万来（せんきゃくばんらい）みたいですね」
伊「そうなんだよ。さっきまでくのいちの子達が代わる代わるお見舞いに来てさ～、すっかりお祭り騒ぎ」
珠雪「それについては謝ったじゃないか」
勘「あ、先輩」
珠雪「やぁ、尾浜勘右衛門。怪我でもしたのか？」
勘「違いますよ、先輩のお見舞いです」
珠雪「すまない、気を使わせて。でも、大したことはないぞ？」
勘「全治2週間ですよね？さっき、通りがかったくのたま達が言ってました」
珠雪「流石（さすが）だなぁ、勘右衛門」
勘「いえ、そんな事は…。で、お見舞いですが」
珠雪「…これは？」
勘「町のお団子屋さんで買ってきたお団子です。今日は怪我したり、見舞い客の相手で疲れるんじゃないかなって。腹を下したわけではないみたいですし…」
珠雪「そう言われるとお腹が空（す）いてきたなぁ」
勘「良かった。伊作先輩もどうぞ」
伊「え？良いのかい？」
勘「もちろん」
珠雪「ありがとう、勘右衛門」
勘「良いんですよ。じゃあ、また明日来ますね」
珠雪「え？明日…？」
勘「はい、明日も経過（けいか）観察しますよね？今日渡すはずだった学級委員会の連絡用紙、渡しに来ますから」
珠雪「しまった！忘れてた…」
勘「大丈夫ですよ、後は珠雪先輩に確認してもらうだけですから。それじゃあ明日」
伊「…してやられてるね」
珠雪「楽しそうだな善法寺」
伊「そりゃあまぁ。君がいいようにされてるなんて滅多に見れないし。それにしても、無自覚で出来るって怖いよねぇ」
珠雪「…何が？」
伊「君は優秀なくのたまなのに、妙な所で純粋だなぁ」

《恋の策士》


しっかりしている姿は傍目から見ればそう見える