Op.2: D.S. Waltz
ブリッグズ要塞 赴任者 名義変更
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「では、一曲いかがか?」
「…え?」
慇懃を是とするエチケットブックも面目形なしといったところか。レディにそんな誘い方をしようものなら、普通はスキャンダルを喰らい、紳士クラブから村八分にされることだろう。相手を見極め、あえてストレートな誘い方をしていると見て取れる。
セシリアは差し出された手と、オリヴィエの顔を交互に見る。
「良いのですか…?実は私は女で…」
「フッ。見ればわかる。」
月夜の様な瞳が不遜に微笑んだ。
「ここでまだ休みたいのなら、無理に付き合うことはない」
「…………」
逃げ道まで用意してくれた。先ほどの貴族や将校たちからの誘いとは違う。
断るのも不慣れなことを見越されているようだった。断っても、この人は自分を責めない。
その女性将校の驚くほどストレートなお誘いは、セシリアにとっては今夜受けた誘い文句の中でも不思議なことに唯一手を取りたくなるものだった。
そう思った途端、セシリアはそっと手を伸ばしていた。
向こうでは、ウィーナワルツが華やかなフィナーレを奏でている。
「……よろこんで」
手袋越しに手が重なり、パーゴラから連れ出された。
その大きな手に導かれるまま大公会堂のフロアへと足を踏み入れた。
途端に、光と人々の声が押し寄せる。
先ほどまでは、あんなに怖かった場所。なのに今は、自分の手を引く人がいて、怖さは幾分かマシになった気がする。
軍服の女性将校と、フクシア色のドレスを纏った若い令嬢。
二人が並んでフロアへ現れた瞬間、周囲の視線が集まった。
「エアハート准将の娘では?」
「というと…バーク=フロスト家の末裔か…?」
小休憩時間 から次の曲が始まるというタイミングで、殊更人の注目が多く、囁きが波のように広がっていく。
最悪のタイミングで戻ってきてしまったとセシリアの肩が強張る。恐怖ではなく緊張が勝っていたのだ。
「…え?」
慇懃を是とするエチケットブックも面目形なしといったところか。レディにそんな誘い方をしようものなら、普通はスキャンダルを喰らい、紳士クラブから村八分にされることだろう。相手を見極め、あえてストレートな誘い方をしていると見て取れる。
セシリアは差し出された手と、オリヴィエの顔を交互に見る。
「良いのですか…?実は私は女で…」
「フッ。見ればわかる。」
月夜の様な瞳が不遜に微笑んだ。
「ここでまだ休みたいのなら、無理に付き合うことはない」
「…………」
逃げ道まで用意してくれた。先ほどの貴族や将校たちからの誘いとは違う。
断るのも不慣れなことを見越されているようだった。断っても、この人は自分を責めない。
その女性将校の驚くほどストレートなお誘いは、セシリアにとっては今夜受けた誘い文句の中でも不思議なことに唯一手を取りたくなるものだった。
そう思った途端、セシリアはそっと手を伸ばしていた。
向こうでは、ウィーナワルツが華やかなフィナーレを奏でている。
「……よろこんで」
手袋越しに手が重なり、パーゴラから連れ出された。
その大きな手に導かれるまま大公会堂のフロアへと足を踏み入れた。
途端に、光と人々の声が押し寄せる。
先ほどまでは、あんなに怖かった場所。なのに今は、自分の手を引く人がいて、怖さは幾分かマシになった気がする。
軍服の女性将校と、フクシア色のドレスを纏った若い令嬢。
二人が並んでフロアへ現れた瞬間、周囲の視線が集まった。
「エアハート准将の娘では?」
「というと…バーク=フロスト家の末裔か…?」
最悪のタイミングで戻ってきてしまったとセシリアの肩が強張る。恐怖ではなく緊張が勝っていたのだ。
