Op.4: 汀の錬金術師
ブリッグズ要塞 赴任者 名義変更
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「え……?」
聞き間違えたのだと思った。
「お父様にも…何も告げずに?」
「挨拶はしたさ」
「でも…どうして……?」
ヴィンセントは僅かに目を伏せる。
「母さんなりに、家族を守るためだ」
「私たちを……?」
「あぁ。だがお前を置いて逃げたわけじゃない。私たちを捨てたわけでもないよ」
「でも……どこにいるのか、分からないのでしょう?」
「居場所までは聞いていない。知らない方がいいこともあるからね」
「どうして?」
「知っていれば、訊かれた時に答えなくちゃならないだろう?」
冗談めかした声音だったが、その目は笑っていなかった。
誰にどう言う理由で訊かれることがあるの?なぜ母は、家族のために家族から離れる必要があったの?
疑問は次々浮かぶのに、どれも寂しさと喪失感が貼り付いて喉を通らない。
「母さんは無事だよ。セシリアの前で見せたことはないが、少なくとも、そう簡単に行き倒れるような人じゃない」
「……」
父の言葉で不安が消えたわけではない。
それでも、根拠のない慰めを口にしているのではないことだけは分かった。
今ここで問いを重ねても、母が帰ってくるわけではない。
セシリアはひとまず、その不在を胸の奥へ置いた。
代わって目の前に現れたのは、もっと不可解な現実だった。
軍がセシリアに下したのは、軍法会議を経ての処刑でも、投獄でもない。
与えられたのは、信じ難いほど華々しい資格だった。
医学校卒業資格。
医師免許。
そして国家錬金術師資格。
「……試験は?」
「免除だ」
「ですが、国家錬金術師まで……私は受験の申請すらしていません」
「軍が不要と判断した」
机へ置かれる書類が増えるほど、喜びより困惑の方が深くなっていく。
最後に、薄いファイルが一冊置かれた。
表紙へ記された名前を見た瞬間、セシリアの指が止まる。
聞き間違えたのだと思った。
「お父様にも…何も告げずに?」
「挨拶はしたさ」
「でも…どうして……?」
ヴィンセントは僅かに目を伏せる。
「母さんなりに、家族を守るためだ」
「私たちを……?」
「あぁ。だがお前を置いて逃げたわけじゃない。私たちを捨てたわけでもないよ」
「でも……どこにいるのか、分からないのでしょう?」
「居場所までは聞いていない。知らない方がいいこともあるからね」
「どうして?」
「知っていれば、訊かれた時に答えなくちゃならないだろう?」
冗談めかした声音だったが、その目は笑っていなかった。
誰にどう言う理由で訊かれることがあるの?なぜ母は、家族のために家族から離れる必要があったの?
疑問は次々浮かぶのに、どれも寂しさと喪失感が貼り付いて喉を通らない。
「母さんは無事だよ。セシリアの前で見せたことはないが、少なくとも、そう簡単に行き倒れるような人じゃない」
「……」
父の言葉で不安が消えたわけではない。
それでも、根拠のない慰めを口にしているのではないことだけは分かった。
今ここで問いを重ねても、母が帰ってくるわけではない。
セシリアはひとまず、その不在を胸の奥へ置いた。
代わって目の前に現れたのは、もっと不可解な現実だった。
軍がセシリアに下したのは、軍法会議を経ての処刑でも、投獄でもない。
与えられたのは、信じ難いほど華々しい資格だった。
医学校卒業資格。
医師免許。
そして国家錬金術師資格。
「……試験は?」
「免除だ」
「ですが、国家錬金術師まで……私は受験の申請すらしていません」
「軍が不要と判断した」
机へ置かれる書類が増えるほど、喜びより困惑の方が深くなっていく。
最後に、薄いファイルが一冊置かれた。
表紙へ記された名前を見た瞬間、セシリアの指が止まる。
