Op.4: 汀の錬金術師
ブリッグズ要塞 赴任者 名義変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ずいぶんうなされていましたね。悪い夢でも見ましたか?」
「夢……」
そうだ。質の悪い夢だったかもしれない。
「あの……ロックベル先生たちは……」
一縷の希望をもって訊ねたが、キンブリーが静かに目を伏せたのをみて
「残念ながら」
そう言われる前には胸の奥が強く引き攣った。
「……」
同時に、意外でもあった。
殺戮そのものを任務として受け入れ、それどころか昂揚すらしているように見えた男が、二人の死についてだけは本当に惜しんでいるように見える。
「……私のせいです」
「?」
「その場にいたのに……お二人を助けられませんでした。私が、もっと早く動けていたら……」
何が医者になる、だ。
何が医学界の権威の孫、だ。
人間が殺される瞬間をほんの一度まともに目の前へ突きつけられただけで、指先一つまともにかなかった。
「あなたらしい」
キンブリーはしばらく黙ってセシリアを深淵の底のような瞳で見つめ、やがて口を開いて出た言葉は否定でも慰めでもなかった。
「本来なら、ご自分の心配をするところでしょう。あなたが何をしたのか、お忘れですか?」
殲滅対象となったイシュヴァール人を、軍に隠れて治療していた。
極刑でも不思議ではない。
そう考えても、「治療しなければよかった」という言葉だけは浮かばなかった。
「………」
「とはいえ、事情聴取をするのもあなたの行いを裁くのも私ではない。帰還後、然るべき裁きが待っていることでしょう」
「……はい」
この先に何が待っているのかを考える気力もなかった。
そんなセシリアを眺め、キンブリーがわずかに目を細める。
「随分浮かない顔をなさる。あなたは、非常に素晴らしいことをしたというのに」
「え……?」
「私は、使命を貫こうとする者を好みます。あのご夫婦もそして………あなたも」
慰める響きは微塵もない。代わりに、その笑みには常人には理解し難い熱が宿った。
「軍令に背けばどうなるか知りながら、今にもボロボロな炭になりそうな己の身を燃やし、ひたすら命へ尽くしたー」
「!」
キンブリーがずいと顔を寄せた。
その目はセシリアを愛でているのではない。
もっと内側にある、形のないものの輪郭を、芸術品を味わっているようだった。
「——あなたは実に……美しい」
「夢……」
そうだ。質の悪い夢だったかもしれない。
「あの……ロックベル先生たちは……」
一縷の希望をもって訊ねたが、キンブリーが静かに目を伏せたのをみて
「残念ながら」
そう言われる前には胸の奥が強く引き攣った。
「……」
同時に、意外でもあった。
殺戮そのものを任務として受け入れ、それどころか昂揚すらしているように見えた男が、二人の死についてだけは本当に惜しんでいるように見える。
「……私のせいです」
「?」
「その場にいたのに……お二人を助けられませんでした。私が、もっと早く動けていたら……」
何が医者になる、だ。
何が医学界の権威の孫、だ。
人間が殺される瞬間をほんの一度まともに目の前へ突きつけられただけで、指先一つまともにかなかった。
「あなたらしい」
キンブリーはしばらく黙ってセシリアを深淵の底のような瞳で見つめ、やがて口を開いて出た言葉は否定でも慰めでもなかった。
「本来なら、ご自分の心配をするところでしょう。あなたが何をしたのか、お忘れですか?」
殲滅対象となったイシュヴァール人を、軍に隠れて治療していた。
極刑でも不思議ではない。
そう考えても、「治療しなければよかった」という言葉だけは浮かばなかった。
「………」
「とはいえ、事情聴取をするのもあなたの行いを裁くのも私ではない。帰還後、然るべき裁きが待っていることでしょう」
「……はい」
この先に何が待っているのかを考える気力もなかった。
そんなセシリアを眺め、キンブリーがわずかに目を細める。
「随分浮かない顔をなさる。あなたは、非常に素晴らしいことをしたというのに」
「え……?」
「私は、使命を貫こうとする者を好みます。あのご夫婦もそして………あなたも」
慰める響きは微塵もない。代わりに、その笑みには常人には理解し難い熱が宿った。
「軍令に背けばどうなるか知りながら、今にもボロボロな炭になりそうな己の身を燃やし、ひたすら命へ尽くしたー」
「!」
キンブリーがずいと顔を寄せた。
その目はセシリアを愛でているのではない。
もっと内側にある、形のないものの輪郭を、芸術品を味わっているようだった。
「——あなたは実に……美しい」
