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君には満開の花が似合う

 後日。ペパーは落ち着きなくそわそわしながら目的の人物を待っていた。

「ペパー!」
「お、来たか!」

 いつもの顔の右側で編んでいる三つ編みを揺らしてアオイが現れた。パルデア中を駆け回るために乗り回しているミライドンには乗らないで駆け寄ってきたあたり、近くで散策していたのだろうか。

「ペパーと二人でピクニックするの久しぶりだね!」
「いつもボタンかネモがいたからな」
「わたし今日を楽しみにしてたんだよ!新しいサンドイッチのレシピ教えてくれるんでしょ?」
「やっぱサンドイッチに食いついてきたな、オマエ」
「えへへ」

 アオイは照れくさそうにはにかんだ。きっとこうしてはにかんだ笑みを向ける人間は限られているのだろう、と考えると少し誇らしい気分になった。

「んじゃ今からサンドイッチ作るから、マフィティフたちと遊んでくれるか?」
「え?レシピ教えてくれるんじゃなかったの?」
「まずは食ってみてから教えてやるよ。ま、できてからのお楽しみってやつだ」
「わかった!」

 アオイは素直に頷き、手持ちのポケモンを出しペパーの手持ちとも遊びだした。すっかりアオイに慣れてしまったペパーの手持ちたちは、一目散にアオイに駆け寄り遊んでアピールをし始めた。

「……」

 一瞬手持ちたちが羨ましいと思ってしまったが、ペパーは頭を横に振り雑念を払ってから手元に集中し始めた。サンドイッチ自体は作るのは簡単だ。もうすでに体に作り方が染みついてしまっているから。問題は仕上げだ。ペパーはバスケットからある物を取り出すと、サンドイッチを乗せた皿に撒き始めた。綺麗に見えるよう、彩りも考えながら慎重に。

「……よし!できたぞー」
「ほんと!?」
「おいおい、泥んこちゃんじゃねーか。先に手洗えよー」
「はーい」

 アオイはペパーのパルシェンに弱い勢いのみずでっぽうを出してもらい、手を洗い軽く全身の泥汚れを落としてからペパーの方へ駆け寄って来た。

「それで、新しいサンドイッチって?」
「ほら」
「!わぁ~、すごい綺麗!」

 アオイの前に置かれたのは、ただのサンドイッチではなかった。サンドイッチ自体はそんな目新しいものではない。具材も普通のものだ。サンドイッチの周りに散らばっているフリーズドライされた花びらが一際目を引く、芸術性の高い飾り付けが施されているのが特徴的なサンドイッチだった。サンドイッチに刺すピックも、周囲の花に合わせて花があしらわれたものになっている。

「これ本当にペパーが作ったの!?すごく綺麗!!」
「当たり前だろー?他に誰が作るっていうんだよ」

 このサンドイッチがビワの発案だ。

──ピクニックとサンドイッチが好きなら、それを一層特別感のあるものにしてしまえば良い。

 という考えのもと三人で話し合った結果、サンドイッチを花で飾り付けて出すというプレゼントに至ったのだ。

「サンドイッチも美味しいね!なんだかいつもより美味しく感じるかも」
「はは、褒めすぎだって」
「やっぱりペパーはすごいなぁ。きっと食べた人みんな幸せにする、そんな料理人になれるよ」

 アオイは優しさに満ちた笑みを浮かべていた。しかし瞳は何かを確信しているような強い意志が感じられるものだった。
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