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君には満開の花が似合う

「……」

(ん?あれって……)

 ボタンはすっかり見慣れた後ろ姿を見かけ、足を止めた。本屋で彼を見かけるなんて珍しい。もしかしたら新しい料理のレシピを求めて本屋にでも来たのだろうか。などと考えつつ声をかける。

「ペパー」
「うおっ!?」
「……いや驚きすぎだし」

 ボタンが声をかけると、彼──ペパーは盛大に体を揺らし大きな声をあげた。どうやら相当驚いたようだ。自分としてはそこまで大きな声をかけたつもりはないし、よほど考え事に没頭していたのだろうか。

「本屋いるの珍しいね。何読んでたん?」
「あー……その、だな……」

 ボタンの質問に、ペパーはたじろいだ。知り合いなら聞いてもそんなおかしくない質問だと思うのだが、とボタンが不思議に思っていると、ペパーが後ろに本を隠していることに気づいた。そしてその本の表紙にはこう書かれていた──『女の子がもらって嬉しいプレゼント』、と。

「あー……」

 それだけですべてを察してしまった。ボタンの暖かい眼差しでペパーは気づかれたと察してしまったらしく、顔がどんどん赤く染まっていく。

「アオイへのプレゼントに迷ってると見た」
「……そ、そうだよ!!だから何だ!?」
「いやキレんなし」

 ペパーがアオイに対して友情を超えた好意を抱いているのは、もう周囲にとっては知ってて当然な事実であった。気づいてないのは当の本人だけ。それ以外のみんなにはもう気づかれているので、みんな暖かい目でペパーのアタックを見守っていたのだが、そこら辺はさすがはチャンピオン。手強い。というか通じてない。例えるならノーマルタイプにゴースト技を繰り出してるようなものだ。つまり効果なし。度重なる玉砕する様を、ボタンも何度見かけたことかわからない。さっさと告白しろや、あぁ?とメロコに焚き付けてもらおうと思ったこともあった。

閑話休題。

 今度はプレゼントでアタックかけるのかー、などと思いつつボタンはまた口を開く。

「何プレゼントするつもりなん?」
「まだ迷ってる。参考までに、オマエは何もらったら嬉しい?」
「うちは参考にならんと思うよ」
「言うだけ言ってみろ」
「新しいPCパーツ」
「オマエに聞いたオレが馬鹿だった」
「だから参考にならんって言ったのに……」

 ボタンはため息を吐いた。見かけて声をかけてしまった以上、素通りはできない。しかし自分では戦力にならない。であれば、どうするか?
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