「あの… 名無し殿…。怒っているでござるか…？
拙者が何かしたなら謝るでござる」

ガープ君が不安そうな顔で私に聞いてくる。
別にガープ君は何も悪くないし何もしていない。
ただ、ガープ君はアガレス君ばっかり。勝手に嫉妬して私がイライラしているだけなのだ。

「別に。なんでもないから。話しかけないで」

「あ… 名無し殿…」

悲しそうな困惑したような表情の彼を横目にその場を立ち去る。



…



はあ。最悪…。嫌われるに決まってる。今更謝れないし、明日会うのも気まずい…

目的もなく歩き続け、さすがに疲れてきた。無意識のまま歩いてきたからここがどこかも分からない。
このまま消えてしまいたい…
そう思っていた時。


「あ！名無し殿！やっと見つけたでござる！」


頭上にガープ君が居た。羽を広げて空から私を探してくれていたようだ。


「名無し殿。こんな遠くまで疲れたでござろう。おうちまで送っていくでござるよ！」

笑顔で迎えに来てくれたガープ君。この人はどこまでお人好しなんだろう。
自分の先程の行動と彼の優しさが相まって、涙が溢れてくる。
反射的に私はガープ君の胸に飛び込んでいた。

「え…！？え！？名無し殿！？どうしたでござるか！？」

動揺しながらも両手で包み込んでくれるガープ君。その手は暖かくて、優しくて、私の全てを受け止めてくれる。
背の高い彼を見上げると、少し照れたような優しい表情でこちらを見ていた。


「ガープ君…、あの…さっきはごめんなさい」

彼の顔を確認しながら謝罪をする。嫌われていないか、怒られないか、とても不安だった。

「拙者は名無し殿が無事に居てくれて安心したでござる。誰しもイライラする時や気分が優れない時はあるでござるから謝る必要なんてないでござる！」


ガープ君は絶対に怒らない。
怒りの感情を持っているのだろうか？
いろいろ我慢しているんじゃないだろうか？

「ガープ君、…こういう時は怒ってもいいんだよ」

変なことを口走ってしまった。
ガープ君は驚いたような表情をしている


「うーん、何も怒る理由なんてないでござる…
あ、じゃあ…」

ガープ君は少し悩んでから口を開いた。

「拙者すごく心配したでござる！もう勝手にどこかへ行っちゃだめでござるよ！」

ガープ君らしい説教。
この人は叱ったりすることが苦手なんだろうな。


「はい…、ごめんなさい。もうガープ君から離れません」



「拙者は名無し殿のことが大好きでござるから。嫌いになることなんてないでござるよ」


また両手で優しく包み込まれ、暖かい彼の胸に頭を埋めた。





終