はじめまして
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練習試合を見に来い。と言われて、初めて大学の体育館へ入った。
流川くんがバスケット選手として凄いというのは、学内誌を見てから知っていたけど、実際にプレーしている姿を見るのは初めてで、とても緊張していた。
朝、先に部屋を出る流川くんに、レモンの蜂蜜漬けを渡した。沢山作ったから、先輩たちと食べてねと言うと、「いやだ」と真顔で言われた。
(あんな沢山、一人で食べれるわけないのに)
体育館の中は観客が多く入っていた。
せっかく来たのだから、前の方で見たいと思って、空いてる席を探すと、ちょうど開いてる席を見付けた。
「あ、あの、ここ空いてますか?」
既に座っていた女性に声をかける。
パッと振り返った女性は、私よりずっと大人っぽくて素敵な人だった。
「空いてますよ、どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
先輩らしい女性は、とても落ち着いた雰囲気を纏っている。私もこんな大人な女性になりたいな・・・
「すみません、座ってもいいですか?」
後ろから声をかけられて振り返ると、少し肩で息をする女性が立っていた。
「あ、どうぞ」
「失礼します。」
歳は近そうだけど、これまたキレイな人だ。
美人2人に挟まれて、私は妙にドキドキしてしまった。
しばらくすると、館内にワァっと声が上がった。
選手たちがコートに入っていた。
流川くんの姿を探す。
(わぁ、いたいた!)
先輩らしい人たちの後ろ歩いて、流川くんがコートに入ってきた。
流川くんが姿を見せると、黄色い歓声が上がった。彼女ができたと噂されても、その人気は健在だ。
(分かってたけど、やっぱり少しツラいな・・・)
当の彼女である私は、声を上げて流川くんを呼ぶ勇気なんてなくて、ただ視線を送ることしかできない。
そんな自己嫌悪に落ちそうになったとき、コート上の流川くんと目が合った。
見付けてくれた。
私が小さく手をふると、少しだけ笑ってくれた。
私だけに笑ってくれたと思うと、胸が熱くなった。
そんな流川くんの顔が、急に険しくなった。
あれ?と思うと、先輩らしい人が何やら流川くんに話しかけてる。
「てか、何で一緒なんだよ!」
「いや、こっちの台詞ですよ!」
「・・・先輩たちあっち見るな」
「「はぁあ?!」」
聞こえてきた声に、まさかと思っていると、先に座っていた女性がこちらを見た。
「あの、2人ともちょっといいかな?」
2人というのは、私と後からきた女性のことだろう。
ここにいる3人は、同じことを考えてる気がする。
「もしかして、あそこにいるの彼氏?」
「「・・・はい」」
聞けば、先に座っていた女性は三井先輩、後からきた女性は宮城先輩の彼女だそう。というか、流川くんの先輩方の名前も初めて知った。
試合前は少し険悪な雰囲気だったのに、試合が始まるとそれが嘘のようだった。
パスを貰うとリングへ一直線に向かう流川くんの姿は、本当に格好良かった。
家でモリモリご飯を食べたり、ウトウトしてたり、たまに甘えてきたりする流川くんの姿との違いに、凄くドキドキした。
「勝ってよかったね。」
「そ、そうですね!」
「初めて見に来たけど、楽しかったです。」
試合は流川くんのチームが勝利した。
偶然にも知り合った先輩方の彼女さんたちと、流川くんたちが出てくるのを、体育館まで待つこととなった。
後ろからガヤガヤと男の人達の声がして振り返ると、流川くんが三井先輩と宮城先輩から、何かやいやいと言われてる姿が見えた。全部無視してるっぽいけど・・・
「お、お疲れ様。」
「・・・いつから知り合い?」
「え?彼女さんたちと?」
(こくこく)
「さっきだよ。三井先輩?の彼女さんが声かけてくれたの。」
「・・・そーかよ」
そこへ三井先輩と宮城先輩が「いつの間に彼女作ってんだよ!?」と流川くんに尋ねるけど、やっぱり流川くんはスルーして、まるで盾のように私の正面から動かない。
「あ、そうだ。メアド交換しない?」
「え?いいんですか?」
「いいですね、しましょう!」
三井先輩の彼女さんに誘われ、私はお二人と連絡先を交換した。お二人とも先輩だけど、共通のお友達ができた気がして、とても嬉しかった。
やった!と思って流川くんの方を見ると、やれやれと少し呆れた顔をしていた。
先輩方と分かれて、流川くんと並んで歩いていると、フワリと流川くんに手を掴まれた。
「先輩の彼女たちと何話した?」
「へ?いや、そんな別に・・・」
「何話した?」
「んー、晩ご飯うちで食べてることとか?」
「・・・まじか」
少し流川くんの表情が曇った。
言っちゃいけなかったのかな。
「今度、3人で遊ぼって言ってもらったの。」
「・・・」
「私さ、学部にも友達いないし。すっごく嬉しくて・・・」
もしかしたら、流川くんは私と先輩の彼女さんたちと仲良くしてほしくないのかもしれない。でも、私は今日の出会いがとても嬉しかった。
「いーんじゃね」
「え?」
流川くんを見ると、さっきの曇った顔が和らいでいた。
「いい人たちっぽかった」
「そうだよね!」
繋いでいる方と反対側の手で、頭を撫でてくれた。
たぶん流川くんは、私の気持ちを汲み取ってくれたんだろう。
「先輩らはうるせーけど」
「そんなこと言わないの!」
この出会いが、私のぼっち大学生活を終わらせる、一筋の光になった。