その手をよく見せて
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ちょっと整理させてほしい。
なんで、起きてるの?
さっきまでグーグー寝てたじゃない。
私の口からポロリと出た告白。
寝てるしと思って、油断してた。
まさか、このタイミングで起きるなんて・・・
「・・・お、起きてたの!?ひどい!!」
「なっ!何でだよ!?タイミング良く起きただけだろ!?」
「良すぎ!!絶対起きてたじゃない!!」
「ちゃんと寝てたっつーの!!」
「起きてた!!!」
「寝てた!!!」
「おーい、そろそろ締めるよー。」
「「・・・はい」」
三井くんと押し問答してたら、守衛さんが来てしまった。
二人並んで芸術棟を出る。かなり気不味い。
いや、その気持ちが偽りとは言わない。好きなことには間違いないけれど、タイミングとか色々あるじゃないか・・・
「・・・おい」
「・・・なんでしょうか?」
思わず変な返事をしてしまう。
三井くんも気不味い表情をしている。あーとかえーとか言いながら、言葉を探している。
「さっきの・・・嘘じゃねーよな?」
『さっきの』というのは、私の口から飛び出したあれだろう。
出てしまった言葉は戻せない。覆水盆に返らずだ。
「・・・嘘でも冗談でもないよ。」
ここまできたら、ちゃんと言おう。
「私は三井くんが好き。」
そう言って三井くんを見ると、三井くんはその場にへにゃりとしゃがみ込んだ。
「えっ、ちょっと、」
「はぁー、なんだよー」
ガシガシと頭を掻き、口元を手で押さえる三井くんは耳まで赤くなっている。私は三井くんと視線を合わせるべく、同じようにしゃがんだ。
「・・・真っ赤だね。」
「うっせ、見んな。」
「・・・なんで?」
「・・・今、めちゃくちゃ緩んだ顔してっから」
「好きなやつから告白されるとか、ヤバすぎだろ。」
この大きな男は、なんて愛しいのだろう。
「・・・両想いだね。」
「・・・そうだな。」
ゆっくり立ち上がる三井くんにつられて、立ち上がる。
三井くんはふーっと大きく息を吐くと、ゆっくりと私に手を伸ばす。
その大きな手、しなやかな腕、大きな体に私は閉じ込められた。
「・・・好きだ。」
私を閉じ込める力が、少し強くなった。
_______
「ひーさーしーくん、そろそろ起きたら?」
「あぁ・・・」
「朝練あるって言ってなかった?」
「あ、そだった、」
私がうっかり告白した日から、2週間ほど経った。
晴れて恋人同士となった私達は、たまにお互いの部屋に泊まったりして、今のところ順調な交際をしている。
「パン何枚焼く?」
「2枚」
「はーい」
昨日は三井くん、いや、寿くんの家で晩ごはんを食べて、そのまま朝までコースだった。あのバル○ン事件のときも朝までコースだったけど、その時と違うのは、何もないことはないってこと。
シャワーを浴びて出てきた寿くんは、台所でコーヒーの準備をする私に絡まってきた。
「危ない、お湯こぼれる。」
「ちょっとぐれー大丈夫だろ。」
寿くんは二人きりのとき、けっこうスキンシップを取りたがる。やっぱり可愛いやつだ。
「なぁ、次の土曜日、空いてるか?」
「うん、今のところ何もないよ。」
「うちで練習試合あるから、見に来いよ。」
「え、いいの?」
寿くんがバスケをする姿を見るのは、初めて出会った日以来だ。しかも練習じゃなくて、試合を見れるなんて。
「絶対行くね!」
「最前列で見とけよ。」
パンの焼ける匂いがした。
キッチンにマグカップが2つ並ぶ。
「レオナ」
大きな手が私の頬に触れる。
長く真っ直ぐな指が唇をなぞる。
この手に触れられていると思うと、心臓がジワリと熱くなる。
どうか、どうか、この手が私から離れませんように。
(・・・朝練習、間に合う?)
(そんなしんぱ、・・・やべ)
end
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