その手をよく見せて
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三井くんと一晩過ごして数日後、私と三井くんは芸術棟の一部屋にいた。
「こうか?」
「んー、もう少し右」
「どうだ?」
「OK、そのまま。撮りまーす。」
私は三井くんの手を撮らせてもらっていた。
三井くんの手を描こうと思ったのは、クロッキーを見返してる時だった。三井くんの手から放たれたボールが、キレイな半円を描いてリングへ吸い込まれていく。
なんて美しい手なんだろう。
最初お願いしたときは恥ずかしがって「断る!!」と言われたが、食堂の人気メニューを奢るから!と言うと、まぁそれならと承諾してくれた。
常にモデルをしてもらうのは難しいから、自分のイメージする角度や動きで、写真を撮らせてもらうことになったのだ。
「ありがとう、これでやっと課題ができる。」
「間に合うのかよ?」
「たぶん」
「おいおい」
三脚を片付けて、カメラをパソコンへ繋ぐ。
撮った写真を確認して、プリントした。
「いい感じ。」
「そうか?」
「うん、とってもキレイ。」
私がキレイと正直な感想を言うと、三井くんは恥ずかしそうに頭を掻いた。男の人にキレイは無かったかなと少し反省した。
「奢るの今日がいい?」
「いや、もう練習行かねーと。」
「そっか、それじゃまたメールして。」
「おう。」
芸術棟の出入り口で別れた。
練習へ向かう三井くんの背中を見つめる。
あの朝を思い出した。
こんなふうに少しでも関わろうとするのは、ズルいかもしれない。でも、少しでも会いたい、話したいと思ってしまう。それが恋だ。
準備していたキャンバスの前に立つ。
撮らせてもらった写真を見ながら、筆を動かす。
うん、やっぱりキレイな手だ。
(三井視点)
『とってもキレイ』
そう言った彼女の横顔は、とても美しかった。
桐生から手を描かせてほしいと言われたときは、何事かと思った。正直、モデルなんて小っ恥ずかしいことできないと一度は断った。しかし、飯を奢るからと言われ、それなら少しぐらい協力してやろうと承諾した。
描くために毎日付き合うのは無理だから、と写真を撮ってそれを見ながら描くという。
写真を撮るため桐生に呼ばれた場所は、大学3年目にして初めて入る芸術棟だった。なかなか古い建物で、良く言えば趣がある。悪く言えばボロくて汚い。そんな建物だ。
その一室で、桐生は三脚を立てカメラを用意していた。
「それじゃ、そっちに立って。」
「お、おう」
「まず右手から」
桐生に言われる通り、手を動かす。
傾きや指の開き具合など、細かく指示された。何が違うのか俺には分からなかったが、桐生のイメージするものがあるんだろう。
撮り終わると、桐生は早速プリントしていた。
それを見て、うんうんと頷きその言葉を俺に向けた。
心臓が飛び跳ねた。
キレイなんて言われたからなのか、それとも桐生の穏やかな表情にやられたのか。いや、両方だ。
食堂へ行くかときかれたが、この後は練習がある。
そろそろ向かわなければ遅れてしまう。
「それじゃまたメールして。」
「おう。」
『またメールして』
その言葉がじわりと胸を熱くする。
桐生と少しずつ関係を深くなっていくのが、うれしくなっている自分がいる。
あー、これはやられた。
(やべぇ、惚れてるわ。)
「こうか?」
「んー、もう少し右」
「どうだ?」
「OK、そのまま。撮りまーす。」
私は三井くんの手を撮らせてもらっていた。
三井くんの手を描こうと思ったのは、クロッキーを見返してる時だった。三井くんの手から放たれたボールが、キレイな半円を描いてリングへ吸い込まれていく。
なんて美しい手なんだろう。
最初お願いしたときは恥ずかしがって「断る!!」と言われたが、食堂の人気メニューを奢るから!と言うと、まぁそれならと承諾してくれた。
常にモデルをしてもらうのは難しいから、自分のイメージする角度や動きで、写真を撮らせてもらうことになったのだ。
「ありがとう、これでやっと課題ができる。」
「間に合うのかよ?」
「たぶん」
「おいおい」
三脚を片付けて、カメラをパソコンへ繋ぐ。
撮った写真を確認して、プリントした。
「いい感じ。」
「そうか?」
「うん、とってもキレイ。」
私がキレイと正直な感想を言うと、三井くんは恥ずかしそうに頭を掻いた。男の人にキレイは無かったかなと少し反省した。
「奢るの今日がいい?」
「いや、もう練習行かねーと。」
「そっか、それじゃまたメールして。」
「おう。」
芸術棟の出入り口で別れた。
練習へ向かう三井くんの背中を見つめる。
あの朝を思い出した。
こんなふうに少しでも関わろうとするのは、ズルいかもしれない。でも、少しでも会いたい、話したいと思ってしまう。それが恋だ。
準備していたキャンバスの前に立つ。
撮らせてもらった写真を見ながら、筆を動かす。
うん、やっぱりキレイな手だ。
(三井視点)
『とってもキレイ』
そう言った彼女の横顔は、とても美しかった。
桐生から手を描かせてほしいと言われたときは、何事かと思った。正直、モデルなんて小っ恥ずかしいことできないと一度は断った。しかし、飯を奢るからと言われ、それなら少しぐらい協力してやろうと承諾した。
描くために毎日付き合うのは無理だから、と写真を撮ってそれを見ながら描くという。
写真を撮るため桐生に呼ばれた場所は、大学3年目にして初めて入る芸術棟だった。なかなか古い建物で、良く言えば趣がある。悪く言えばボロくて汚い。そんな建物だ。
その一室で、桐生は三脚を立てカメラを用意していた。
「それじゃ、そっちに立って。」
「お、おう」
「まず右手から」
桐生に言われる通り、手を動かす。
傾きや指の開き具合など、細かく指示された。何が違うのか俺には分からなかったが、桐生のイメージするものがあるんだろう。
撮り終わると、桐生は早速プリントしていた。
それを見て、うんうんと頷きその言葉を俺に向けた。
心臓が飛び跳ねた。
キレイなんて言われたからなのか、それとも桐生の穏やかな表情にやられたのか。いや、両方だ。
食堂へ行くかときかれたが、この後は練習がある。
そろそろ向かわなければ遅れてしまう。
「それじゃまたメールして。」
「おう。」
『またメールして』
その言葉がじわりと胸を熱くする。
桐生と少しずつ関係を深くなっていくのが、うれしくなっている自分がいる。
あー、これはやられた。
(やべぇ、惚れてるわ。)