赤と青から逃げたくて
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初めて宮城くんからメールが来た。
『今日休み?具合悪い?』
あぁ、なんて優しい人なんだろう。
家から出れず、布団に包まっていたときそのメールはきた。また視界が歪む。
彼には話した方がいいのかもしれない。そうしないと、きっと彼は私に優しくし続ける。そして、私もその優しさに甘え続けてしまう。
でも、これを話して、彼は私をどう思うのだろう。
驚いて、そして軽蔑するだろうな。
もうあの笑顔も見ることできないだろうな。
私は宮城くんに、やっとの思いで返事を送った。
日も落ちて暗くなっていた。
私はすっかり人気が減った正門前に立っていた。
「レオナちゃん!!」
振り返ると、宮城くんが息を切らして走ってきた。
「大丈夫?」
「大丈夫・・・ただのサボりだから。」
「・・・そう?」
「うん」
私が歩き始めると、宮城くんは何も言わずついてきてくれた。よく見ると髪が少し濡れてる。部活後シャワーでも浴びたのかな。髪も乾かさず走ってきてくれたのか。そう思うと、胸が苦しくなった。
しばらく歩いて、小さい公園のベンチに座った。
隣に宮城くんが座る。
「やっぱ、何かあった?」
「・・・」
「俺、知りたいよ」
「・・・え?」
「・・・俺の向こうに誰がいてるの?」
時間が止まった。
宮城くんは気付いていたんだ。
「・・・いつから?」
「最近だよ。」
「そっか」
「聞いてもいい?」
私は大きく息を吸って話し始めた。
私が入学した中学校には、音楽クラブというのがあった。名前は音楽クラブだったけど、内容は軽音部と言ってよかった。もちろん入部した。
その顧問こそ、私が忘れられない人。
20代の先生で、若いというだけで女子生徒から人気があった。でも、そのほとんどが憧れの好きだったと思う。けれど、私は本気になってしまったのだ。
先生は部室として使っていた音楽準備室で、青い缶コーヒーを飲みながら、赤いギターをよく弾いていた。ギターを触る長い指、骨張った関節、少しカサついてる手の甲、その全てにドキドキした。
『桐生、どうした?』
『いえ、何も。』
『お前ギター上手いな、いつからやってんの?』
『小6』
『そりゃすげーな、俺なんて高校からだよ。』
先生に褒められたくて、必死に練習した。
それでもやっぱり、指が届かなくて弾けないコードもあった。その一つがC7。
中3になっても私は先生が好きだった。でも分かってる。先生からすれば、一人の生徒でしかない。
私はその枠から何としてでもはみ出たくて、先生に告白した。
『私、先生が好きです。』
『・・・そっか、ありがとな。』
『本気です。』
『・・・そんな顔するな。』
『子ども扱いしないでください。』
『子どもだろ。』
『先生、・・・私を大人にしてよ。』
今思えば、本当にませた中学生だ。
でも、当時の私は本気だった。本気で先生が好きで、少しでも近付きたかった。大人になりたかった。
そして、先生は困った顔をしたあと、こう言った。
『C7が弾けるようになったらな。』
その言葉が、私の呪いのように心臓に刻まれた。
私はC7を必死に練習した。練習してると指がつることも多々あった。一発で押さえれるように、繰り返し練習した。
そして、卒業間際だった。
私は先生を音楽準備室へ呼び出した。
『なんだ?桐生。』
『先生、C7弾けるようになったよ。』
私は先生の赤いギターをかまえて、一発で押さえて見せた。
『・・・頑張ったな。』
『約束覚えてる?』
『あぁ・・・覚えてるよ。』
『・・・大人にしてくれる?』
『・・・ほんと、お前には負けたよ。』
そう言って、先生は私を大人にしてくれた。
『今日休み?具合悪い?』
あぁ、なんて優しい人なんだろう。
家から出れず、布団に包まっていたときそのメールはきた。また視界が歪む。
彼には話した方がいいのかもしれない。そうしないと、きっと彼は私に優しくし続ける。そして、私もその優しさに甘え続けてしまう。
でも、これを話して、彼は私をどう思うのだろう。
驚いて、そして軽蔑するだろうな。
もうあの笑顔も見ることできないだろうな。
私は宮城くんに、やっとの思いで返事を送った。
日も落ちて暗くなっていた。
私はすっかり人気が減った正門前に立っていた。
「レオナちゃん!!」
振り返ると、宮城くんが息を切らして走ってきた。
「大丈夫?」
「大丈夫・・・ただのサボりだから。」
「・・・そう?」
「うん」
私が歩き始めると、宮城くんは何も言わずついてきてくれた。よく見ると髪が少し濡れてる。部活後シャワーでも浴びたのかな。髪も乾かさず走ってきてくれたのか。そう思うと、胸が苦しくなった。
しばらく歩いて、小さい公園のベンチに座った。
隣に宮城くんが座る。
「やっぱ、何かあった?」
「・・・」
「俺、知りたいよ」
「・・・え?」
「・・・俺の向こうに誰がいてるの?」
時間が止まった。
宮城くんは気付いていたんだ。
「・・・いつから?」
「最近だよ。」
「そっか」
「聞いてもいい?」
私は大きく息を吸って話し始めた。
私が入学した中学校には、音楽クラブというのがあった。名前は音楽クラブだったけど、内容は軽音部と言ってよかった。もちろん入部した。
その顧問こそ、私が忘れられない人。
20代の先生で、若いというだけで女子生徒から人気があった。でも、そのほとんどが憧れの好きだったと思う。けれど、私は本気になってしまったのだ。
先生は部室として使っていた音楽準備室で、青い缶コーヒーを飲みながら、赤いギターをよく弾いていた。ギターを触る長い指、骨張った関節、少しカサついてる手の甲、その全てにドキドキした。
『桐生、どうした?』
『いえ、何も。』
『お前ギター上手いな、いつからやってんの?』
『小6』
『そりゃすげーな、俺なんて高校からだよ。』
先生に褒められたくて、必死に練習した。
それでもやっぱり、指が届かなくて弾けないコードもあった。その一つがC7。
中3になっても私は先生が好きだった。でも分かってる。先生からすれば、一人の生徒でしかない。
私はその枠から何としてでもはみ出たくて、先生に告白した。
『私、先生が好きです。』
『・・・そっか、ありがとな。』
『本気です。』
『・・・そんな顔するな。』
『子ども扱いしないでください。』
『子どもだろ。』
『先生、・・・私を大人にしてよ。』
今思えば、本当にませた中学生だ。
でも、当時の私は本気だった。本気で先生が好きで、少しでも近付きたかった。大人になりたかった。
そして、先生は困った顔をしたあと、こう言った。
『C7が弾けるようになったらな。』
その言葉が、私の呪いのように心臓に刻まれた。
私はC7を必死に練習した。練習してると指がつることも多々あった。一発で押さえれるように、繰り返し練習した。
そして、卒業間際だった。
私は先生を音楽準備室へ呼び出した。
『なんだ?桐生。』
『先生、C7弾けるようになったよ。』
私は先生の赤いギターをかまえて、一発で押さえて見せた。
『・・・頑張ったな。』
『約束覚えてる?』
『あぁ・・・覚えてるよ。』
『・・・大人にしてくれる?』
『・・・ほんと、お前には負けたよ。』
そう言って、先生は私を大人にしてくれた。