その手をよく見せて
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大学3年の春、最後の一般教養を履修した。
この講義をクリアすれば、あとは専攻の課題に集中できる。
「であるから、この絵は当時の社会性が反映され」
大教室で教授がマイクを持って話している。
一般教養の講義だけど、芸術系の教授だから内容がかなり偏ってる。興味ない学生からすれば、ただ眠いだけだろう。まぁ、私は楽しく聞いてるけど。
都内のマンモス大学、数多くの学部があり、さらにその中で専攻が細分化されている。
私はその中でも芸術科に在籍している。
ほんとに少人数でひっそりと活動しているので、存在を知ることなく卒業する人もいるとかいないとか。
講義はあと15分ほどで終わる。そろそろ出席票に名前を書いておこう。
ふと隣を見ると、一つ席を空けて、男子学生が座っている。いや、正しくは机に突っ伏して寝ている。大きな体が規則正しく上下している。
「それでは、今日はここまで。出席票を出してください。」
教授が講義の終わりを告げる。
しかし、隣の彼は相当熟睡しているようで、全く起きる気配がない。このまま出席票を出さなければ、欠席扱いになる。それは流石に可哀想だ。
「あの、授業終わりましたよ。」
私は彼の肩を軽く叩いた。
「ん?あぁ?」
起きた彼の顔は・・・なかなかの強面だ。
寝起きだからか声も低く、ちょっと恐い。
「じゅ、授業終わりましたよ。出席票出さないと。」
「うわっ、マジか。」
バッと起き上がり、やっちまったと頭をかく姿は、強面な顔とは裏腹にちょっと可愛い。
彼は出席票をサッと書くと「ありがとな、お先に」と足元に置いてあったスポーツバックを抱えて、足早に去っていった。
大学の敷地内でも端の端に、芸術棟はある。
恐らく、学内でも一番古い建物と思われる。煉瓦造りで蔦が張っている。
クロッキー帳と鉛筆を持って、適当に歩く。
何かいい題材は落ちてないもんか。次に描く絵はまだ決まってない。そろそろ描き始めないと、前期の講評に間に合わない。
ホームである芸術棟を出て、さらに敷地内をうろつく。芝生で昼食をとる学生、ベンチに座り寄り添い合う恋人同士、友人とふざけ笑い合う学生、色んな人がいる。この大学のいい所だ。自分と違うタイプの人と出会えるのは楽しい。
そう、さっきの講義の時みたいに。絵に描いたようなスポーツマンと話すことができた。ちょっと恐かったけど。そういえば、体育会系の人と絡んだの初めてだったな。
何か楽しいことが起こるかもしれない。
そんな気がして、私は体育館の方へと足を向けた。
在学3年目にして大学の体育館に初めて来た。
出入り口が開放されていて、中の声や音が聞こえる。近付いて館内を覗くと、ちょうどバスケ部が練習をしていた。
(そういえば、先生がうちのバスケ部強いって言ってたな)
ゼミの教授は学部長で、大学の運営や広報に詳しい。学内広報誌を見ながら『凄い1年がバスケ部にきたらしいぞ』と言っていたのを思い出した。
ただ、残念なことに私はバスケのバの字も知らない。
でも、動いてる人物を描くのは、いい刺激になるかもしれない。クロッキーしてもいいかな。
「おい、何か用か?」
「えっ?」
振り返ると、先ほどの講義で熟睡していた男子学生がボール片手に立っていた。
「ん?あ、さっきの」
「はい、講義でお会いしましたね。」
まさか、ここで再会するとは。
「バスケ部に何か用か?」
「あー、クロッキー・・・じゃなくて、練習してるとこスケッチさせてもらえたらと思って。」
クロッキーという言葉は馴染みがないだろう。ここはスケッチと言った方が伝わりやすい。
「そんなら、監督呼んでやろうか?勝手に入るの気が引けるだろ。」
「ありがとうございます、お願いできますか。」
顔は強面だけど、親切な人だ。
彼が監督を呼んでくれたお陰で、スタンドで描く許可をいただけた。
それじゃ折角だから、彼を一番に描こうかな。
この講義をクリアすれば、あとは専攻の課題に集中できる。
「であるから、この絵は当時の社会性が反映され」
大教室で教授がマイクを持って話している。
一般教養の講義だけど、芸術系の教授だから内容がかなり偏ってる。興味ない学生からすれば、ただ眠いだけだろう。まぁ、私は楽しく聞いてるけど。
都内のマンモス大学、数多くの学部があり、さらにその中で専攻が細分化されている。
私はその中でも芸術科に在籍している。
ほんとに少人数でひっそりと活動しているので、存在を知ることなく卒業する人もいるとかいないとか。
講義はあと15分ほどで終わる。そろそろ出席票に名前を書いておこう。
ふと隣を見ると、一つ席を空けて、男子学生が座っている。いや、正しくは机に突っ伏して寝ている。大きな体が規則正しく上下している。
「それでは、今日はここまで。出席票を出してください。」
教授が講義の終わりを告げる。
しかし、隣の彼は相当熟睡しているようで、全く起きる気配がない。このまま出席票を出さなければ、欠席扱いになる。それは流石に可哀想だ。
「あの、授業終わりましたよ。」
私は彼の肩を軽く叩いた。
「ん?あぁ?」
起きた彼の顔は・・・なかなかの強面だ。
寝起きだからか声も低く、ちょっと恐い。
「じゅ、授業終わりましたよ。出席票出さないと。」
「うわっ、マジか。」
バッと起き上がり、やっちまったと頭をかく姿は、強面な顔とは裏腹にちょっと可愛い。
彼は出席票をサッと書くと「ありがとな、お先に」と足元に置いてあったスポーツバックを抱えて、足早に去っていった。
大学の敷地内でも端の端に、芸術棟はある。
恐らく、学内でも一番古い建物と思われる。煉瓦造りで蔦が張っている。
クロッキー帳と鉛筆を持って、適当に歩く。
何かいい題材は落ちてないもんか。次に描く絵はまだ決まってない。そろそろ描き始めないと、前期の講評に間に合わない。
ホームである芸術棟を出て、さらに敷地内をうろつく。芝生で昼食をとる学生、ベンチに座り寄り添い合う恋人同士、友人とふざけ笑い合う学生、色んな人がいる。この大学のいい所だ。自分と違うタイプの人と出会えるのは楽しい。
そう、さっきの講義の時みたいに。絵に描いたようなスポーツマンと話すことができた。ちょっと恐かったけど。そういえば、体育会系の人と絡んだの初めてだったな。
何か楽しいことが起こるかもしれない。
そんな気がして、私は体育館の方へと足を向けた。
在学3年目にして大学の体育館に初めて来た。
出入り口が開放されていて、中の声や音が聞こえる。近付いて館内を覗くと、ちょうどバスケ部が練習をしていた。
(そういえば、先生がうちのバスケ部強いって言ってたな)
ゼミの教授は学部長で、大学の運営や広報に詳しい。学内広報誌を見ながら『凄い1年がバスケ部にきたらしいぞ』と言っていたのを思い出した。
ただ、残念なことに私はバスケのバの字も知らない。
でも、動いてる人物を描くのは、いい刺激になるかもしれない。クロッキーしてもいいかな。
「おい、何か用か?」
「えっ?」
振り返ると、先ほどの講義で熟睡していた男子学生がボール片手に立っていた。
「ん?あ、さっきの」
「はい、講義でお会いしましたね。」
まさか、ここで再会するとは。
「バスケ部に何か用か?」
「あー、クロッキー・・・じゃなくて、練習してるとこスケッチさせてもらえたらと思って。」
クロッキーという言葉は馴染みがないだろう。ここはスケッチと言った方が伝わりやすい。
「そんなら、監督呼んでやろうか?勝手に入るの気が引けるだろ。」
「ありがとうございます、お願いできますか。」
顔は強面だけど、親切な人だ。
彼が監督を呼んでくれたお陰で、スタンドで描く許可をいただけた。
それじゃ折角だから、彼を一番に描こうかな。
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