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SS

✼カル→エス 若干暗め?


あと少しの距離で分かれ道というのに今更何を話そうか話題に困って、
暫く二人、移ろう街並みの中、遠く見える銭湯の排煙を眺めていた。
あの煙が心に舞い込んだようでなにか苦しい。夕闇に染まりかける頭、君の姿だけははっきりと映されている。
「エステル」
「ん?」
目があって
きっと僕だけの君になればいいのに。
なんて茹だった欲が朦朧と理性を突き抜けたみたいでいつの間に触れていた肌は酷く柔らかい。
「っ!?」
あって気付いたときは既に遅くて
「な、なにすんだよ!」
容赦ない突き飛ばしに軽く蹌踉めく。脳内にはまだ甘い密がたっぷり貯められているというのに仄かに湿った感覚が気不味くて
「ごめん」
目をそらして手で口元を拭った。
地面に落ちた影は相変わらず長く真っ黒で。僕の影の一部だけ、エステルに掛かっている。


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