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SS

✼カル→エス

その影


終礼が終わり、各々支度をして、ときどき掃除当番だったりして…そんな少しのズレの時間さえ既に浮き足立っているというか、静かな高揚というか…
「カルボンお待たせ。」
「うん」
並んで歩き出す。するとやんわりとエステルの香りが鼻腔を擽った。リラックスの作用でもあるのか、自然と歩速が緩やかになる。
「アルコール、今日も用事だって」
「うん、聞いた」
「理由とか言ってた?」
「ううん。」
「そっか。…まあ、二年生だしそんなに遊んでもいられない、よな…」
そう溜め息のように笑った。きっとアルコールが見せてくれた猫の散歩道だとか公園の穴場だとか、そんなものの夕焼けでも浮かんでいるんだと思う。
「一年の時はどのくらい探検してたの」
「ほぼ毎日だよ。…なーんか、俺すんごい振り回されてたけど。それはそれで楽しかったなって」
確かに一年の時のエステルは四六時中あたふたしていた気がする。側にいるには少し落ち着かなかったかもなんて思う。

「…今日暇?」
「え?まぁ。」
「少し、寄り道しない?」
「えっ、どこ?俺今日財布持ってきてないよ」
「ううん。公園とか、散歩道とか。」
「あっ、あーそういう!うん、いいよ。じゃ商店街行ってリュウさん探しだな」
「リュウさん…」
「商店街名物の猫だよ!茶色でずんぐりした。」
「あ、あの。」
「うん。元気かなー、今日会えるといいな」
「うん」
薄らはしゃぐ姿は子供みたいだ。もっとも、世間からしたら僕たちはまだ子供の域を抜け出せないのだろうけど。それでも自ら子供と思うほど幼くもない。道にのびる影だっていつの間にか長くなっていた。




続く…?
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