霊力供給
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「ここのところ調子が悪くてですね」
そう言って肩を貸した彼をソファーに座らせた。
来て早々に体調が悪いと倒れかけた彼を心配し、誰か呼びに行こうかと提案するも、横に居てほしいと懇願され、従うしかなかった。
「…どうも霊力が弱まる時期が周期的にあるようなのです」
どういう原理で存在しているのかも謎の彼。少し透けている真っ白な手を握り、不安で心配で、何か出来ることがないかと言葉をかけた。
「ナナシさんに、お願いが…」
言いずらそうに伏し目がちに口を濁した彼。何でもいい、今自分にできることなら何でもする覚悟だ。
「ナナシさんの霊力を少しだけ下さい。それが唯一の治療法です」
自身に霊力などあるのか聞くと、いつもここに居るので身についているのだとか。
どうすればそれができるか、いざ聞いても彼はそっぽを向いてばかり。
「…だって、きっと断るでしょう」
何故断る選択肢があるのだろうか。
そんなことしないと断言すると、彼は透けた手で私の頬に触れた。
「口づけで体液を頂きます。それが方法です」
全く考えもしていなかった手法に、固まってしまう。
ほら、やっぱりとまた具合が悪そうに横になる彼を見て、恥ずかしさがちょっとだけ上回っているが、ややあってそれを承諾した。
「…本当に?後悔、しませんか?私などの為にナナシさんの唇を奪うなどと」
具体的に言われたくはなかったが、状態が悪い彼のためだ。背に腹は代えられない。
それでも良いとゆっくり彼に近付いて行った。
「では…遠慮なく」
少し身体を起こした彼の横に座ると、彼は私の両頬に手を当てた。ぐっと目を瞑っていると、冷たいものが口に触れる。
口内にぬるりと舌がねじ込んできて、じゅるり、じゅるりと口の中を味わっていく。
初めての感覚に体がぞくぞくとし、息継ぎしようと口を離そうにも彼の手は体を抱きしめてきて、後頭部を掴まれそれを許さなかった。
「…っん…おいひいれす…ナナシさ、ん…」
彼との初めてのキス。長過ぎるキス。濃密すぎるそれに頭がクラクラしてきてしまう。
どれだれ時間が経ったのかわからない。やっと彼の口が離れ糸を引く。
「…治りましたよナナシさん。ありがとうございます」
さも平然と元気そうに言う彼に、既に腰の砕けている私は笑うしかなかった。
それからというもの、一月に1度だったのか3週間に1度、1週間に1度、今やほぼ毎晩この行為を繰り返すようになっている。
彼曰く、一度なったらちゃんと完治するまで気を抜いてはいけないと言うが、少し頻度が多過ぎやしないかと疑念を抱くようになっていた。
今夜もおずおずと店に入るや否や、手を引っ張られ早々に部屋へと連れ込まれた。
「ナナシさんっ…遅いじゃないですか、私、もう…!」
壁に追い込まれ、荒い息がかかる。あの日のようには透けていない。ここ最近機嫌も具合もすこぶる良さそうなのに、毎晩彼は霊力を求めてくる。
「肌からも頂きたい」
唇をついばむように重ねてきては、首筋にも口を付けてくる。強く吸うため最近は首筋に赤い痕が沢山出来てしまっている。
耳を優しく噛まれる。変な声を挙げてしまい口を抑えるも、手を無理やり退かされ口内を味わうように舌を入れられた。
これはもう駄目だ、これ以上は、もう。
「駄目、ですか?何故?ナナシさんの霊力、気持ちいいのです…私を構築するものがナナシさんの一部で、ナナシさんの身体に私の印を刻む…嗚呼っ、これ以上の幸せなどあるものですか…!」
恍惚の表情で唇を求める彼は、既に本来の目的とは違った理由で迫っていた。
それはとても幸せそうで、拒否することが出来なくなっていった。
「…そうです、もうこの魂は貴女無しではいられない。責任、とってくださいね?」
始まりは誰だったか、原因は何だったか、もうどうでもいい。
私しか映さなくなった真っ黒な瞳が、私の全てを差し出すには充分であった。
Fin.
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