浮気者
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「今の子は誰?」
わざと見せつけるようにして腕を絡ませた女は主催者の男に尋ねるも、男の目線は今逃げ帰った小兎のような人物に向けたままだった。
「ねえ、聞い…て…」
男の表情をみた女は息を飲んだ。
恍惚に、嬉しそうに、息を荒くしながらあの子の後姿を見つめている。
「ナナシさん…!嫉妬してるのですよね悲しいですよね苦しくて私の事しか考えられませんよね嬉しい可愛い可愛い可愛い!」
両手を頬に当て、発狂するように喜びをあらわにする男に、女はたじろいだ。
さっきまで接していた紳士で知的な男性像とは大きく変わり、狂喜乱舞する狂人にしか見えなかった。
女は怖くなり、何も言えずにその場を後にした。
「いいですよ…私も愛しています、愛し合っているのです、もっと、もっと私だけを考えて下さい頭の中も心の内も痛みでいっぱいになって私だけのナナシさんになって!」
今にも走り出しそうな雰囲気の男は絞り出すように狂気を口にする。後姿が見えなくなって、その名を口にした彼女のグラスを手に取ると、愛おしそうにグラスのふちをなぞった。
「涙でいっぱいになって、悔しいと想って、どんな味で飲み干したのです?」
周りの目も気にせずグラスに付いたリップの跡に、自身の口を付けて口内ではグラスを舐めまわした。
「可愛い可愛い私だけのナナシさん、次お逢いしたら死ぬほど甘やかして差し上げますからね…」
その日を思い浮かべにたりと笑う男と、曲が始まり踊りだす会場。
たった1人のためだけに開催された会は、主催者の思惑通りに夜が更けていった。
Fin.
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