浮気者
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前から好意は持っていた。
紳士的で優しくて、人ではない特別な雰囲気を持つ彼を勝手に想っているのが悲しくて、今夜誘われたことを喜び、お洒落しても褒めてくれる相手は居ない。
多数の客の一人の端っこ。それが私。
「…失礼、話が弾んでしまったもので」
帰ろうかと思っていた矢先、やっと主催者の彼が声を掛けてくれた。
先ほどの女性はこちらを見ながら微笑んでおり、彼が戻ってくるのを待っているようだった。
「いえ、あの…さっきの人は」
「少ししたら彼女の元へ戻りますよ」
「…そう」
という事は、この後の予定はあの人と過ごすことが決まっている。
私は胸が痛くて痛くて、ぐっと涙が出そうになるのを堪えた。持っていたグラスをもう一度仰いで、横で服を褒める彼の言葉も耳に入ってこない。
「…私、具合が悪いので先に帰ります。誘ってくださってありがとうございました」
「おや?もうお帰りに?少しここで休めばよろしいではないですか、部屋もご用意しますよ」
その部屋は彼と彼女のものだろうに。
そんな想像をしたら、ますます悲しくなり、世辞で引き留めてくれた彼を無視して席を立つ。
「貴女は私の特別なお客様ですから心配で…外まで送りますよ」
いつも特別と言ってくれるのが嬉しかったのに。差し出された手が取れなくて、足早に扉へと駆け寄った。それでも後ろから彼はついてきて、扉の前へ立つと優しく頬を撫でる。
「…待ってますから、必ずまた来てくださいね?」
「…はい」
また、約束してしまう。馬鹿な私がそこに居る。この甘い声に抗えない。
「ねえ」
その様子を見ていたのか、先ほどの女性が割って入ってきた。その表情はこちらを品定めするようで、少し鼻で笑うと、彼の腕に絡みつく。甘い香りと自分とは正反対な色気が彼にはお似合いだと思ってしまった。
私は彼の横をすり抜け、急いで扉を開けると足早に会場を後にした。
もう、来ない。会いたくない。
泣きながらその場を後にした。
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