私が二人 逆ver
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ソファーに移動すると、その人物はお姫様抱っこのまま腰かけ私を離さなかった。寧ろ強く抱きしめ、頬擦りをしてくる始末。
「おい…お前」
慌ててロビーから来たギャルソンさんの目は怒りに満ちており、見たことのなかった私は少し怖くなった。そしてそのまま抱きしめてくる彼の顔は、嬉しそうなギャルソンさんの顔瓜二つだったのだ。
「その方に触るな、私のお客様だ」
低く警告する声、ゆっくりと近づくギャルソンさんと、顔を背けて私を離そうとせずにもっと力を入れるそっくりさん?の間で、何が起こっているのか頭が混乱していた。
「…ギャルソンさん」
「大丈夫ですよ、今助けますからね」
「・・・」
呼ばれても返事はしないが嬉しそうに首を傾げ返答の意を示すそっくりさん。
「あの、この人誰…?」
確かにそっくりではあるのだが、喋らない事と普段の言動からは全く想像のつかない緩んだ表情のその人に抱かれながら問いかける。
「…一応私です」
「い、一応?」
苦々しそうに、それでいて少し恥ずかしそうに答えるギャルソンさんの表情を見るのは初めてだった。いつもはオトナの男というような澄ました人なのに、今日は最初から調子がくるっているようだ。
少し身を捩ってそっくりさんから離れようとすると、悲しそうに声が出ないのか首を振ってイヤイヤと離れることを拒否する素振りを見せた。ちょっと可愛いかもしれないと思い始めていると、本物のギャルソンさんの方が近づき、無理やり引きはがそうと力を入れた。
「離れろっ…!手を腰に当てるな!」
「・・・!」イヤイヤ
「っ痛い痛い!ギャルソンさん!この人も貴方も力強すぎ!」
「あっ…す、すみませんつい」
あまりに引っ張られて肩が外れるかと思うほどだった。それでもそっくりさんは私を抱きしめて離すことをしない。ギャルソンさんと言えば痺れを切らしたのかイライラしながらも、その横に座ってこちらを睨みつけている。
「ねえ、どうなってるんです?どうしてこんな事に…」
「それは…その…」
口ごもるってはそわそわし、実に言いにくそうにしている。
「ねえ、貴方も何か言っ」
「・・・」
その瞬間、口は塞がれた。
「あ…あああ!!」
悲痛な叫びが横から聞こえてくる。冷たくて優しく柔らかな感触に私は思考が停止してしまった。
「ふ、ふざけるな!それは、それだけは!」
こんなに取り乱すギャルソンさん、みたことないな。あと彼とキス、しちゃったんだ。
口を離したそっくりさんは恍惚の表情で私を見つめてくる。その隙なのか、一瞬にしてギャルソンさんの方へと奪取された。口をハンカチで思いっきり拭かれ、涙目でそっくりさんを睨みつけている。
「貴様ぁ…」
「ぎゃ、ギャルソンさん!ねえ、落ち着いて」
「落ち着いていられるものですか!貴女、私にき…好き勝手されて嫌じゃないんですか!?」
その問いかけに、特段嫌でもなく、寧ろ嬉しかったよと答えたかったが、右手をそっくりさんに掴まれ、手の甲にキスを落とされた事が恥ずかしくて、何も答えられなかった。
「だから触るな!この人は私の…!」
いつも特別なお客様扱いだけで、それ以上の関係がなかった。でも今こうしてそっくりさんでもいい、もっと恋人みたいな関係を望んでいた私にとっては、その言葉の続きが聞きたくて仕方なかった。
「私はギャルソンさんの、何?」
「それは…その、お客様、で」
少し意地悪な事を聞いてみても、お客様としか返答がないことが悲しくて、何となく自分からそっくりさんの膝の上に戻っていった。それに驚愕して何をと呟いたギャルソンさんを無視し、そっくりさんは私を強く抱きしめながら、もう一度頬にキスを落とした。
「…私、こっちのギャルソンさんがいい。特別扱いがいい。お客さんじゃ嫌なの」
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