marry me.
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大人しく引き下がるにも人生でかなり重大なことが執り行われそうになり、次の日の夜に店へと押しかけると、店の中はてんやわんやになっていた。
改装でもするのかと言わんばかりに店中修繕やらが行われており、なかなか彼を見つけることができない。こんなにこの店には人?が居たのかと感心していると、聞き覚えのある声が降ってきた。
「おや、待ちきれずにもう来ちゃったのですか?」
いつもの飄々とした声に振り向くと、嬉しそうな彼が箱を手に立っていた。
「ちょっと話があるんですけど!」
「…マリッジブルーってやつですか」
「違っ、こっち来てください!」
無理やり引っぱりこれまでの強引すぎる経緯について回らぬ頭と心でまくし立てた。
「ギャルソンさん、こういうのってその冗談とか」
「まさか私が冗談やその場のノリでやっているとでも?」
「え、いや…その」
「私はナナシさんに関してならいつでも本気ですよ」
「だからって急に結婚なんて」
そう言われると言葉が返せないのだが、何より段取りが良すぎるこの運びは何なのかと説明くらい欲しい。
嫌な気持ちはしない、だが早急で段取りの良すぎるこの展開についていけていない。どう言おうか思い悩んでいると彼は目をそらした。
「こうでもしないと私の気持ちが溢れてしまうから」
彼は持っていた箱を置くと表情を変えずぼそりと呟いた。
「前々からずっと思っていました。私には貴女しかいない、でも貴女にはたくさんの可能性がある…その芽が憎くて辛くてたまらない」
そう憂い伏し目がちに答えた。
「それを潰したくて可能性は私にだけ向いていて欲しくて、嗚呼…すみません、言いすぎましたね」
にっこりと元の笑顔に戻ると、あれやこれやと隣の者に話しかけては忙しそうにこちらへと目くばせした。
「ようするにおふざけとして付き合ってくださいな、どうせ幽霊との結婚など神も認めないでしょうから」
嘲笑った彼は、やっている事と言っている事に矛盾があると思うのだが、本気でやっているという事だけは伝わってくる。背を向けながらまた指示を出すのだが、その背にしがみついて呟いた。
「…そんな言い方しないでください、私達の結婚式なんですから」
本気、そう想ってくれる彼に置いてきぼり気味になっていた心がざわめいた。
「おや、意外と乗り気ですか?嬉しいですねえ」
「茶化さないでください。そんなに思ってくれているなんてびっくりしただけですから。とにかく、何でも急に始めないで!相談して二人で決めることですよ、こういうのは」
「…はい」
彼は少し嬉しそうな反省の笑みを浮かべると頷いた。少し二人で笑うと、彼は背を押して外へと促した。
「当日まで楽しみにしてお肌でも磨いて待っていてください。素敵なドレスをご用意致しますから」
「…うん。わかった」
何もすることがない結婚式に緊張が走る。まだ日があるがきっと眠れない日々が続くのだろう。
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