金木犀
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黒く艶やかな毛を撫でれば、この冷たい指先が熱を持ったかのように感触を食む。
「ナナシさんの髪は柔らかいですね」
鼻孔をくすぐる甘い香りは彼女の新たなお気に入りの香水。甘く秋を告げる、千里先でも香る、橙色の花の香り。
これは金木犀の香りだ。
「そしていい香り」
髪に鼻を近付けて口をつけると、思ってもいなかったであろうこちらの言動に恥じらい彼女は飛び退いた。逃げ腰の彼女に少し不服だが、柔らかくなびく髪をもう一度梳かした。
「花言葉は初恋でしたね」
自惚れの期待が胸を高鳴らせる。わざわざ自分に会いに来るのに、そんな香りを選ぶのだ。これを期待せずして何を思おうか。
金木犀が私に淡い想いを募らせたのか、彼女の白い首筋がよこしまな想いを巡らせているのか。
そんなこと知る由もない彼女の、慌てて意味などないと否定する身振り手振りが面白い。
「リナリアの花など贈れば、ナナシさんはわかって下さいますか?」
きょとんとする呆けた顔の彼女が可愛くて、この後意味を知った顔を想像すると思わず笑みがこぼれた。
明日も会いに来るこの香りは、しばらく私のお気に入りになりそうだ。
fin,
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