爪
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かり
「あ」
塗ってもらって時間の経っていないネイルは無残にも歯形で削られ、口の中にネイルのケミカルな風味が広がる。
「またやってしまった」
折角もう噛まないようにと、彼女がお揃いの色を塗ってくれたのに。
親指の爪だけが歪な先端をしており、勿体無いことをしたと後悔が押し寄せる。
「いけませんねえ」
ここ最近になって出た癖。気付くと親指の爪が口に入っている。
いい大人がこんな癖持っていたことが驚きだが、癖というのは厄介で気か付くと行っているから始末が悪い。
この爪を見るに見兼ねた彼女は、あの温かくやわらかい手でこの冷たい手を優しく包み込み、乾くまで幸せな時間を過ごせていたのに。その彼女とお揃いの色に内心飛び跳ねるほど嬉しかったはずなのに。
最近は彼女が出て行った後いつもこうだ。帰路に就く彼女を窓から眺め、心に溢れるそれに耐えられず口元へ指がいく。
「貴女がいないと親指がなくなりそうですね」
自分で言って自分で笑う。嘲笑う。想像してまた笑う。
親指がなくなったら、彼女はどうしてくれるだろうか。あの優しい手を、さらに自分に向けてくれるだろうか。
「それなら」
右手くらいなくなっても痛くも難ともない、あの優しさと興味が私に向き続けてくれるならいいかもしれない。
次に会いに来てくれた時、慌てて駆け寄る彼女を想像すると、親指は微笑む口元から離れていった。
fin.
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