赤ずきん
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この季節に相応しく、今夜も大降りの雨。それでも可愛らしいレインコートと傘でやってきた彼女を迎え入れると、ついた水滴を吹きながら笑うその姿が愛おしくて、こちらでも用意していたタオルを渡すのを忘れて見入っていた。
「蒸し暑くて敵いませんね」
雨だけでなくじっとりと汗もかいていたらしいその首筋は、生気のない私とは違った色白さで、張り付いた髪がまた何とも言えない色香を醸し出している。
「これじゃお風呂の意味なかったなぁ…」
残念そうに呟く彼女から甘く清潔な香りがする。こんな幽霊の出る古びた洋館に来るのに、そんなに清める必要があったのだろうか。
「意味…」
淡く甘美な期待に胸が膨らむ。
その意味を私は自分勝手ながらに汲み取りたくなっていた。
「ナナシさん」
首筋から胸元にかけて時期的にも薄着で、身長差から膨らみの谷間が見え隠れしている。知ってか知らずか、否、これも私を誘うためか。
「その白い肌は何のためにあるのです」
「え?急に何ですか…?」
少女の呆気なさを残す表情と、しっとり濡れた服から大人であることを強調する肉体に視線を逸らす事が出来ない。
「その輝くような瞳は何のためにあるのです」
彼女の目が好きだ。こんな自分をはっきり視認してくれて、微笑むとき少し細くなる目元とその瞳の色が好きだ。
「その潤った唇は何のために」
質問の意図が解らず、ぱくぱくと口ごもるこの唇が好きだ。私のために話題を見つけて紡ぐあの声もその度に動くふっくらとした唇が愛おしい。
「そのからだは」
足繁く通ってくれるあの細い足も、温かく折れてしまいそうなあの腕も、ふわりと軽やかな髪も全て漏れなく愛している。
なら、ナナシさんに意味を持たせてあげよう。
「食べられるためにあるのではないのでしょうか」
小さな肉体を組敷いて、思っていた以上に腕力のない細い手を無視して唇を重ねた。そのまま首筋へ顔を埋めると甘い香りにあてられて、盛りのついた犬のように貪り舐め回しては耳元まで這わせた。
首筋の感度に他人に聴かせられないであろうあらぬ声が挙がると、無意識に笑みがこぼれる。
「これでは赤ずきんではありませんか」
男は狼なのだと、誰がいっていたな。
抵抗むなしくあれよあれよと柔肌が見えて、はしたないことに私の涎も舌も止まらなくて、ぴちゃぴちゃとやましい水音が部屋にこだまする。
こんなことはいけないと懇願する彼女に、あの童謡を知らないのかと笑いかけた。
「赤ずきんは必ず一度は食べられる身なのですよ」
誰か今すぐ自分を討ち果たしてくれない限り、彼女は今から腹の中。
じゅるりじゅるり、優しいと思って会いに来た相手に食べられてしまう愚かな赤ずきん。不用心で優しく柔らかい、憐れでかわいい私だけの赤ずきん。
「嗚呼、言っておかねばなりませんね」
腹を裂かれようが彼女はこの腹の中から出さない、猟師なんて役柄にも渡しはしない。ありきたりな結末なんて最初から死んでいる私には関係ない。
ヴィランが幸せになったっていいじゃないか。
「お前を食べるためですよ」
彼女を腹の中に納めるというより、彼女の腹の中に入れると言う方が正しいとか下品な考えの中、拒否権を持たせずに激しく求め、こちらが果てる時には白い肌は赤い痕だらけになっていた。
その様子をうっとりと眺めながら、まるで大団円の花吹雪の様だとほくそ笑みを浮かべるのであった。
fin.
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