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バケツをひっくり返した様な突然の雷雨。この時期特有のそれは、引っ越して早々に何の雨具もない自分の息を切らす。ひたすらに覚えのない道を走ると古い建物が見えてきた。あそこで雨宿りするしかなさそうだ。
軒先は少し雨漏りしているが、この雨を凌げるなら問題ない。数メートル先さえ見えにくい雨量、光と音の感覚がほぼ同時の雷鳴、そしてやたらと暗い木々。
(迷子になった時みたいだな)
ふとそんなことを考えていると、背後から古い木戸の開く音が聞こえて振り返った。
「おや、雨宿りですか」
悲鳴にならない声を挙げそうになる。急に背後に人が立っており、しかも言っては悪いが薄気味の悪い男が半分開いた戸からこちらを覗いて声をかけてきたのだ。
「そんなところでは風邪をひきますよ、さあ中へ」
こちらの心中を知ってか知らずか、にんまりと笑いながら中へと誘う男。ここにきてようやく男の服装や少し見える室内に店か何かなのだと気が付いた。
そうなるとこちらは店の前を塞ぐ営業妨害にも等しい、慌てて軒先から出ようとすると、近くで爆音のような雷鳴が轟き、驚きのあまり腰を抜かした。
「…おや、貴女」
何か言いかけた男だったが、自分に手を貸してくれた。この豪雨と雷鳴の中、引っ越して間もない場所の感覚があやふやな住居へ走るのは難しいだろう。恥ずかしながらこの人の言う通りに店の中へと歩を進めた。
「タオルをどうぞ、今お茶を淹れてきますから」
そこまでしなくともと遠慮したのだが、いいからと押し付けられたふわふわのタオルを頭からかけられると、男は早々に部屋から出ていってしまった。
通された部屋は少し古ぼけてはいるが、手入れがされていた。窓には外が見えない程の雨が打ち付けている。壁にかけられている蝋燭が灯って温かそうに照らしていた。
「どうぞ」
声に振り返ると、いつ扉を開けたのかウェイターの様に盆に紅茶と小さな壺を乗せた男が立っていた。慌てて礼を言い、財布にいくら入っていたか思い出すのに必死になっていた。
服が濡れているので立っていたのが、男はまたいいからと言っては高そうな椅子に座らせてくれた。お茶を頂いて雨が止んだら帰る、そう考えていたのだが、向かいの席に男が座って寛ぎ始めたので、まさか対談でもするのかと冗談を考えていたのだが、男も紅茶を啜り出したので恐らく現実となるのだろう。
「なんと言いますか、こういうこともあるのですね」
紅茶を啜る男は感慨深いと言った感じにこちらをしげしげと見つめた。
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