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「…ふむ。これで良いでしょう」
願を掛け終わったのか、突如としてぱっと顔を上げると、彼はけろっとした表情で、いつものように笑って見せた。
「ギャルソンさん!?今のは…」
思っても居なかった彼の告白ともとれる願い事に、彼女は困惑した。そして、そんな彼女を見た彼は、火照った彼女の頬を自分の冷たい手で冷やしながら、眉間に皺を寄せて溜息をついた。
「おやナナシさん…盗み聞きとは人が悪い。こういうものは、誰かに言ってしまうと叶わないと相場が決まっているのですよ?酷いじゃありませんか」
「つ、冷たっ…あ、そうじゃなくて!えっと…」
耳元でそんな事を言われて聞こえない訳がないのだが、嬉しさと恥かしさと驚きが入り混じる彼女には、それを言い返す言葉が見つからなかった。
彼は何かを言おうとしている彼女を自分の方へ向かせると、ようやく目を合わせて笑った。
「…絶対、私に会いに来て下さいよ?どうせ幽霊の願いなど神頼みしても叶うはず無いのですから。これは、ナナシさんにしか叶えられないことです」
「…うん」
「来年も、再来年も…ずっと、ですよ?」
そう言われると彼女は力強く頷き、彼の腕の中へと飛び込んだ。
「絶対私が叶えてみせます。ずっと一緒に居るんですから!」
「ふふっ!そうですか…その粋なら叶いそうですね。それと、年を越したら早めに来てくださいよ?…意外と寂しがり屋なんですから。さてと!」
腕の中に居る彼女をみて、彼は満足そうに笑うと、その額に口をつけた。
「ここで強飯と、明けには姫始めをですね…」
「除夜の鐘で性欲落として下さい」
彼はそんな真剣でぎらぎらとした眼差しを送ると、彼女は力強く彼を押し返すのであった。
その年の除夜の音には一際大きい鐘の音が一つ、この廃墟まで届いたのであった。
fin.
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