しあわせな王子様
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「ね、ナナシさん」
「なぁに?」
幽霊が恐れるなど、可笑しな話ではあるけれど。
私が一番恐れる事、それは彼女が私を拒絶する事。
「私、そんなに可愛いですか?」
受諾の安堵と拒絶の恐怖に板ばさみの感情は、日々渦の大きさを増していく。
「今更?…うん、真ん丸くてふわふわしてて愛嬌があるし…」
「…」
どうしたらいい、どうしたら。
「あんまり可愛いって言うと悪いかな…気になってる?」
「いいえ、貴女に好かれているならば嬉しい事ですよ」
そんな考えに小難しい顔をしていたのか、こちらの様子を見ていた彼女は気を遣って、顔を覗かせた。
結局は、そうだ。
「なら私の事、内面的な部分は好きですか」
この子が私から離れさえしなければ、死者にさえ笑顔を向けてくれる優しさを持つ彼女が、どうすれば私を拒絶することなく傍に居てくれるのか。
「そりゃあね。私の知らないこと沢山知っててびっくりするの。おまけに優しいし、紳士的って言うの?しっかり者で時折おちゃめだしさ」
結果論を導き出すと、酷く姑息で卑怯な、解答に辿りつく。
「そうですか。ナナシさん、それは…」
優しい彼女は、それが出来ないじゃないか。
「それはきっとね、愛しているのですよ」
それが分かってしまうと、あとはもう、彼女自身からそれを引き出すだけだった。
愛という言葉を合図に、恐怖は確実なる安堵へと変わっていった。
「あ、愛?」
私の口からそんな単語が出た事に、彼女は首を傾げて少し笑って見せた。
「ええ。それは私を深く愛している証拠です」
「うーん…そう、だよね…?うん、そうかもしれない!」
こうやって少しずつ、少しずつ。
「ふふ、私嬉しいですよ。ナナシさんに愛されていますから」
「ほんと?」
「ええ。それにね、私も」
私が求めるその答えに辿りつくように。
「深く、ナナシさんを愛していますから」
この手の中に、既に彼女は落ち始めている。もう、後戻りは出来ないのだ。
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