しあわせな王子様
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「…ナナシさんの方が、もっと可愛らしいですよ」
だが最近になって、彼女の愛が、自分の求める愛とは違っている事に気が付いてしまったのだ。
そしてもう一つ。可愛いという言葉とは全く裏腹に、彼女に隠している事があった。
「本当は」
もっと、不気味なのです。
そんなこと、口が裂けても言えなかった。だって、そんなことが知れたら、彼女は二度とこうして抱きしめてはくれなくなるだろう。
「ほんとは?」
彼女からもっと違う愛が欲しい。可愛い存在ではなく、一人の異性として見て欲しい。
欲というのは止め処なくて、彼女が私を気に入るという奇跡と可愛がってくれることに飽き足らず、それ以上の関係を望む自分の烏滸がましさに反吐が出そう。
「…ちゅーして欲しいです」
甘えるような素振りを見せれば、こんな大胆なお願い事も、彼女は受け入れてくれる。幸せなのだが、それはこの姿だからこそ出来る行為。
この仮の姿で猫を被り、もう片方の姿を隠していることが、そろそろ苦しくなってきたのだ。
「え!も、もう…おでこ、だけだよ?」
私、貴女より年上なのに。私は成人男性で、可愛がられる容姿でもなければ腕の中に納まる図体でもないのに。貴女の胸に顔を寄せて、手だって胸に置いて感触を確かめて、やめられないなぁなんて考えているのに。貴女が帰った後、その日の思い出に性を出しているというのに。
やましいことなんて、貴女で何度も考えているのに。
「ナナシさんにこうされるの、大好きなんです」
それなのに、何も知らない貴女は、こんな私を傍に置いているなんて、迂闊にも程がありますよ。
「これ、ギャルソンさん相手でもちょっと恥かしい…かも」
猫撫で声で擦り寄れば、彼女のはにかむ表情に眩暈がしそう。
「ふふふ…もっとやってみれば慣れてくるのでは?」
「そう…かな?ちょっと試してみよっか?」
だけど、やっぱり本当のことは言えなくて、目の前にある彼女の愛を貪ることしか出来なかった。
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