しあわせな王子様
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隠し事というものは、いつか暴かれるのが常と言う。
なのに、一向に隠し事が暴かれそうにない私は、嘘でも真実でもない胸の内を吐露する機会も勇気もなくて、1cm開いた口を閉じて、開いて、閉じて。
「どうしたの?」
最終的に、首を傾げる彼女の笑みに、口を閉じて笑うしか出来なくなるのだ。
私が隠している秘密。今彼女が見ている私が、愛嬌を振りまくための姿であるという事実。
そんな私の本当の姿を見たら、彼女はどう思うのだろうか。ここ数日、その事ばかりが頭の中を埋め尽くしていた。
「ギャルソンさん、どうかした?」
「ん?いえ、ちょっと考え事をね」
首を傾げながらニコニコと笑う彼女に、お茶を出そうとしていた事を思い出し、ティーカップに白く半透明な手でお茶を注いだ。
「珍しい…何か悩みでもあるの?大丈夫?」
おいで?
そう言って両手を広げてくれる彼女に、誘われるようにして身を委ねた。
私の真っ白く丸みを帯びた身体は、彼女の腕の中にすっぽりと嵌り、その温かさと甘い香りに包まれ、柔らかな胸に顔を埋めると溜息が漏れ出した。
「何かあるなら言ってね?私も力になるよ?」
優しい声が聞こえる。暖かな手が後頭部を擦ると、言いし得ぬ安堵と幸福感に包まれる。
無償の愛、彼女の愛、それを一身に受けられる私は、今誰よりも幸せなはずなのに、胸につかえるそれが、もやもやとした気持ちにさせていた。
「ええ…でも、ナナシさんにこうしてもらえるだけで十分癒されますから」
「そう?というか、ギャルソンさんの可愛さに癒されているのは私だけどね!」
「…」
可愛い。
優しく棘のないその言葉が、酷くこの胸に突き刺さった。
彼女の愛してくれるこの丸みを帯びたフォルムとキャラクター性。この姿に変われる事を何度も神に感謝し、彼女の心を鷲掴みに出来る部分を持っている事を喜ばしく思っていた。
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