愛≧飽
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「ギャルソンさんはやっぱり私の事一番に理解してくれますね…私、ギャルソンさんに出会えて本当に良かったです。…大好きです」
「…」
彼女の愛の言葉も耳を通り抜け、思わず返事をしなかった。そろそろ時間だ、早く鞄を取って帰らないか。それしか考えてなかったからだ。
「あ、あの…ギャルソンさん?」
「…あ、すみません。考え事をしていました」
「そう…ですか…」
「え、と…そうじゃなくてですね?これから貴女が、後何回その言葉を言ってくれるのか不安でして…」
「え!ず、ずっと言うに決まってるじゃないですか!こんなに大好きなんですもの…!」
「ありがとう。それで安心しましたよ。…おおっと、こんな時間ですし、愛しい子を見送らなければ」
「あ…ほんとだ」
彼女は気付いていないのだろう、こんな事1から10まで隠さず言ったら、ショックで大泣きするのは目に見えている。ある意味、彼女の言う全てを理解するという言葉は間違ってはいなかった。
彼女を見送った後、盛大な溜息と共に明日のこの時間を考えると憂鬱になってしまう。何か理由をつけて明日は帰そうか、そう、そうしたい、一日も長く彼女と距離を置きたい。
そんなことを考えていると、ふいに声をかけられた。
「支配人?どうしたのよぉ?」
高い声に振り返ると、長い黒髪を垂らして白くぼやける下半身を浮遊させている女性、幽霊ねえさんの姿があった。
「え…いや…別に」
「…随分歯切れが悪いわねぇ?ナナシちゃんと何かあったの?今さっきの様子じゃ、喧嘩ではないわね。何か悩みでもあるのかしらぁ」
「…」
彼女、時折怖いほど私の心の中を当てるのだ。
鋭い勘で読み取られたのをきっかけに、観念した私は洗いざらい彼女に全てを話すことにしたのだった。
「まあそうよねぇ、付き合ってから随分経つでしょ?それは倦怠期だろうし、仕方の無いことだとは思うわ」
するとどうだろう、普通ならば女性は女性の味方をするものなのだが、彼女はそれをせず、素直に話を聞いてくれたのだ。初めて人に恋人との関係に悩んでいる事を打ち明けた私は、少しだけ理解されたように思えて心が軽くなっていくのを感じ取っていた。
「…責めないのですか?」
「何で私が?恋人同士ってそういうものよぉ。そうねえ…このまま無理やり傍に居たら、支配人がナナシちゃんの事嫌いになっちゃいそうで怖いわぁ」
聞いてくれた上に、更に対策まで考えてくれる彼女に、涙が出そうになる。そういえば彼女と話すのも久しい。だってそう、私の彼女が悲しそうな顔をするものだから、話す訳にもいかないのだから。お互いそれは了承済みで、彼女が来ているときは、互いに接しないと暗黙の了解が出来ている。実に面倒くさいのだが、それもこれも彼女のため。こちらも涙が出るほど努力をしているのだ。
「そうだ!」
「何か策でも?」
「いっそ、しばらく会うのをやめればいいのよ!」
「…それを私が彼女に言ったら、絶対泣きますよ。」
「ううん、支配人はいいの。ナナシちゃんが会わなきゃいいのよ」
「それはどういうことでしょう」
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