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それは2月14日のこと。
日本中のお店では今日それを売り切らなければいけないという目標が立ち、日本中の恋する女性がタイミングを見計らい、日本中の男性が何やらソワソワとしながら暇を持て余す仕草を見せ付ける日。
「…どうしよう」
ここ、怪談レストランの扉の前で、神妙な顔をしている彼女も、今日というイベントに漏れなく、その綺麗なラッピングのしてある箱を見つめていた。
「い、いきなり手作りとか引くかな…?て、ていうか甘いもの大丈夫なのかな…いやいや!そもそも食べるって言う習慣があるのかな!?」
綺麗にラッピングされた箱の中には、彼女が丹精込めて作ったお菓子が入っている。3週間ほど前から何にするか悩みに悩み、ようやく作ったそれは、彼女の淡い想いが詰まっているのだ。
「今日ちゃんと好きって伝えるって決めてたのに…何だか自信なくなってきたよ…」
詰めたところで渡せるかどうかは別の話で、ここまで来てその歩みを止めてしまった彼女は、俯いてうな垂れてしまった。
すると、不意に目の前の扉が開き顔を上げると、よく見慣れたふさふさとした顔と目が合った。
「あれ?ナナシちゃんじゃにゃいか…そんなところで何してるのにゃ?」
「あ…猫さん。こんばんは…」
「こんばんは!そこ寒いにゃ?早く入ればいいのに」
そこに居たのは化け猫であり、彼に訝しげに招き入れられると、先ほどから何故入らなかったのか訪ねられ、事の次第を話すと、納得したように首を縦に振った。
「ふむむ…勇気が出ないのかにゃ?」
「はい…ここまで来たのに急に怖くなっちゃって」
「心配する必要ないにゃ!店のみんなで、ナナシちゃんがチョコを渡すの応援してるの知っているにゃ?」
化け猫が自信満々に彼女へ言い切るのも、彼女の意中の彼以外、店の全員が今日この日にチョコレートを渡すことを知っており、総出で応援しているのだ。彼女もその甲斐あって、今日ここまでたどり着いたのだが、本番は自分ひとり彼に向かって想いを伝えなければならない。それが今になって、考えてきた言葉を言い切れるか不安になってきたのだ。
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