SantaClaus
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「っ…ぁ」
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
急速に上がる脈拍と、思っている以上に出ない声量がもどかしくて、折角笑ってくれている彼に、笑顔の一つも返せずに、その五文字以外が浮かばなくなっていた。
「よ…ろこん」
「…と、死ぬ前にやっておけばよかったものを…。一度くらい、情熱的にプロポーズしてみたかったですよ。ていうか生前にそういうお相手が居たのかどうかすら謎ですよ、私…」
と、考えている間に、ぱたん、と指輪の入った箱が閉まる音がしたことで、ナナシの正常な思考が一瞬にして戻った。
「え…あ、あぁ…お芝居!?」
そうしょげるギャルソンに、ナナシははっと我に返った。
あと1秒でも遅ければ、冗談と即興で行ったこの芝居に、本気で答えるところであったと、ナナシは胸を撫で下ろした。そしてそれと同時に、これが本気であるはずないことに気付いたナナシは、先ほどの情熱的で高いテンションとは打って変わって、目の前でしょげているギャルソンに目を奪われた。
「私…ちゃんと結婚していたのでしょうか…?ていうか生前からそういうものに縁がなさそう…独り身の孤独死とかじゃなかったでしょうね、嫌ですよそんなの…」
そういう記憶がないのか、ギャルソンは跪きながら落胆し、盛大に溜息をつくと、膝についた埃を落とすような仕草をしながら立ち上がった。
「あー…えっと」
過去を知っているわけでもなく、下手に励ます訳にもいかず、今度は別の意味で戸惑ってしまう。先ほどの情熱的な芝居はどうあれ、今目の前で嫌悪感に苛まれるギャルソンを放って置くことは出来ないため、覚めやらぬ高揚を抑えると、話題を逸らすかのように、嬉しそうな笑顔を作ってギャルソンの肩に手を乗せた。
「い…今さっきのプロポーズ、胸がときめきましたよ!何だかミュージカルみたいでしたけど…ギャルソンさんらしいです」
「…でしょ?でしょ?こんなロマンティックな台詞、指輪を差し出しながら言ってみたかったんですよねー!」
「あははっ、ギャルソンさんって本当にロマンチストですよね。映画のワンシーンみたいでしたよ」
「映画の観すぎでしょうか?やってみるとなかなか歯痒いものですけど」
死んでから叶う夢もあるものですね。
そんな事を言いながら、ナナシのその一言に元気を取り戻したのか、はしゃぎながら語るギャルソンは、機嫌が良さそうに笑顔を作って見せた。
そして、先ほど取り出した箱から改めて指輪を取り出すと、ナナシに手を差し出すよう求めた。
「それはそうと…シミュレートさせてくれてありがとうございます。ささ、ここまでやったなら、最後は左手の薬指にはめましょうか」
「そう、ですね。お願いします」
いつか自分も、彼のように素敵な人に指輪をはめてもらえるだろうか。
なんだかんだで、ナナシもそんな夢のようなシチュエーションを楽しめたのか、満足気に左手を差し出すと、喜んでギャルソンから指輪をはめてもらったのだった。
「よくお似合いですよ、貴女にそれを贈れて良かった。エンゲージリング並に大切にして下さい」
「本当に嬉しい…毎日着けますからね!」
「んふふ!是非そうして下さい。選んだ甲斐がありましたよ」
なんて素晴らしい日だったのだろう。
お化けばかりだけと楽しいパーティーに招待され、素敵なプレゼントを選んで貰って、胸が高鳴るような言葉も贈ってくれた。これ以上何を望むのだろう。
そう思っていた矢先、ナナシの頭の中に、何かが引っかかった。
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