嘘吐きの薬
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まさか。
「ギャルソンさんがあの薬をくれた時、ラベル見ちゃったんです」
こちらの様子も見ずに、彼女は目を逸らしながら話していた。
「何にも知らないで飲ませようとしているのかと思って、お芝居してみたんですよ」
「芝居って」
「知らないで飲ませたのかと思ったら、結局そうでもなさそうだし…」
嘘、騙す、芝居、気付く。
その言葉に血の気が引いていく気がした。
「え、ちょ…嘘、でしょ?嘘でしょ!?」
「そうですよ?二人して嘘なんですよ。全く…これじゃあお互い恥かしいだけじゃないですか」
言葉を組み合わせて導き出した真実に、困惑した自分は声を荒立てて彼女の傍に駆け寄った。
まさかお互いが『知らないふり』と『惚れたふり』をしているなど、誰が思うだろうか。
「冗談にしては酷いですよ!わ、分かった時点で飲まずに言えば…」
「…わかってないなぁ」
「何がです!」
怒る権利など全くないのに、彼女のその行動に屈辱を覚え、やはり遊ばれていたのだと憤慨した。
だが、彼女はこちらがおかしなものを飲ませた事を責めるのでもなく、また愛していたという事実をからかうわけでもなく、何も分かっていないと言いながら、一向に目を合わせようとはしなかった。
「言っておきますけど、私はからかう為じゃないですからね」
こっちなんて本気であったというのに、芝居までして惚れたふりをして冗談ではないというのもおかしい話だ。
その説明に納得がいかなかったが、そっぽを向いて節目がちに話す彼女に、次第に頭の中で、なんとも都合のいい解釈が浮かんでくる。
「な、なら何故…?」
そんな、都合が良すぎるだろう。自分のような欲深な嘘吐きに、そこまで幸運があってよいはずがない。
しかし、1つしか考えつかないその答えに、焦る気持ちを抑えつつも彼女の答えが待ち遠しかった。
「私は…薬の所為にしてギャルソンさんに甘えて、いっぱい好きって言いたかっただけ…」
嗚呼、そんなはず
「意味、分かりますよね?」
「わかっわかりますっ…」
「やだ、そんなに驚かなくたっていいじゃないですか」
舞い上がる気持ちと共に、彼女の言わんとしている事を自分に都合の良い解釈として受け止めた。
「こんなことなら、あんな薬使わなくとも良かったのでは…」
「やっぱり薬の効果知ってたんですか?」
「え!あ、その…」
先ほどは鎌をかけていたのか、はやりそうかと言って、侮蔑の眼差しが突き刺さった。
「あーあ、でも意外だなぁ…」
「な、何がです?」
「私のように、探求心が強くてかわゆい女の子に怪しげな薬を飲ませて手籠にしようとするなんて…押し倒されたらどうしようかと」
「違う違うんですそれはそういう事の為じゃなくて!!」
「…っあはは!そんなに必死に言わなくたって分かってますよ」
そんなやましい事など一度も考えていなかった、と言えば嘘になるのは黙っておこう。
それでも変な印象を与えたくなかった為、必死に弁解すると、彼女は笑って返事を返してくれた。
「で?薬の効果がないと分かったら、何にも伝えてくれないの?」
「くっ…」
挑発的な上目遣いと大人びた笑顔、これが私を掻き乱しているのだ。
そして催促するように、腕の中に飛び込んできては、上目遣いで微笑むのだから、勝てるはずがなかった。
「…好きです」
「割と控え目ですね?さっきはあんなに言ってくれたのに…」
「好きです!一服盛るほど大好きですっ…」
「ふふ!私も猿芝居するくらい大好き!」
悔しい、だが嬉しい。
あれだけ伝えるのだと意気込んでいたのに、この肝心な所で聞こえるか聞こえないか微妙な声量しか出ないなんて情けない。また彼女にからかわれながら、二度とこんな真似はしないと心に誓ったのだった。
「結局、これって本物だったんですか?ていうか、どこまでが本当で…」
「いえ、入手経路と魔女さん力作というのは本当なのですが…ナナシさんに効かなかったのですし、効能はどうなのか…」
「うーん、元から好きだから変わらないとか?」
「へ?あ、う…ん…」
小瓶を手にし、あっけらかんと言う彼女の大胆な言葉。きっとそれが答えなのだと確信すると、口元を緩めて返事をしてしまい、にやけながらあやふやな返事を返した。
「…自分で言っておいて照れました」
「これでお互い様ですね」
薬が効こうが効かまいが、何をしていても彼女は自分を喜ばせることに長けているようだ。
照れた様子でそっぽを向くその姿がやはり可愛くて、手を伸ばしてその頭を撫でてみた。少し不服そうに見つめる瞳は、芝居と言っていたあの言葉を言っていた時と全く変わらず、いつでも真っ直ぐこちらを見つめてくれていた。
「次は媚薬とか貰って来て下さいよ。やられっぱなしじゃ悔しいんで、一服盛り返しますから!」
「何恐ろしい事言っているんですか!?そ、そんなもの盛られたら、私…」
ただじゃ終わらせないと言う彼女の発言に胸が高鳴りながら、もしもそんな薬があったら、薬の所為にして何でも出来る気がする。
こっそり貰いに行こうと思ってしまったのは、彼女には秘密である。
fin.
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