嘘吐きの薬
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「…いや」
本当の、愛?
「ん?ど、どうしたの?」
これは、本当の愛なのか?
「…フェアじゃ、ありませんよ」
やっと気付いたそれに、彼女を抱きしめていた腕を解いた。
「ギャルソンさん…?」
「ごめんなさいナナシさん…これは貴女の望んでいることではないのですよ」
そうだ、これは彼女の望んでいる事ではない。
それに気が付いた私は、彼女を見つめながらそう伝えると、彼女の顔に不安の色が伺えた。
「…私の事嫌いになっちゃったの?」
「いいえ…嘘を吐いて一服盛るくらい愛していますとも。だけどね、こんな感情は愛とは呼べませんよ」
今彼女が抱いているそれは、無理やりに作られた感情であって、薬の効力で作られた偽物の愛なのだ。自分で一服盛っておいて言うのも難だが、これは求めていた愛とは程遠い。
愛とはこんな薬で作り上げるものではない。ようやく分かったその答えと、目の前にいる悲しそうにこちらを見ている彼女の表情に、胸が痛くなった。
「待っていてください、直ぐに解毒剤を貰いに行きますから」
どんなことをしてでも彼女の愛が欲しかったのに、ここに来てそれは偽者だと言って彼女を突き放した自分は随分と我侭で、勇気が出せず薬なんかに頼った意気地なしの自分が許せなかった。
今さっき彼女に伝えた言葉をずっと前に素直に言えなかった自分が、こうして今彼女を不安がらせているのだ。
「そうしたら、今度こそ貴女に愛していると伝えますから。だから、待っていてください」
効果が消えて伝えたとして、彼女がこの気持ちを受け取ってくれる自信も確証も無かった。だけど、これ以上逃げる事もしたくなかった。
待っていて欲しいと伝えると、最後に少しだけ魔がさして、嫌がらないのをいいことに彼女の額へキスをした。自分からこんなことが出来るなど驚きなのだが、作られた感情であっても、今愛されているという現状を噛み締めてみたかったのだ。
今度こそ、彼女自身に気持ちを伝えるべく、魔女本人に解毒剤を貰いに動き出した。行動といっても、普通に電話して事の次第を伝えるだけなのだが、まるで通販をした後のクーリングオフのようなやりとりであると思えてくる。
「そっか」
そんな自分を見てか、彼女も納得したように呟いた。
理解を示してくれたのか、安心してドアを開けて一歩外へ出ると、了承だと思っていたその呟きは、言葉を続けていた。
「二人して嘘ついてたのね」
そして、呆れ気味に聞こえるその声に我が耳を疑った。
「ナナシさん…?」
何の話なのだろう。
嘘という言葉を使った彼女に振り返ると、ソファーに腰をかけ、足を組んでこちらを見据えている姿が見える。気まずそうな顔をして、こちらを見ているのだ。
「ちょっとやりすぎたからすぐバレると思ってたけど、お互いで騙しあってるとは思いませんでしたよ」
彼女の苦笑いとその説明に、状況処理が追いつかなかった。
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