S&S.Halloween
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「ギャルソンさん?」
やっと戻ってきた二人が玄関から入ると、玄関内には棒立ちしているギャルソンの姿があった。何をするでもなく、俯いてただ立っているのだ。
具合でも悪いのかと心配になるも、声をかけても微動だにしないその様子に、ナナシと駅員は顔を見合わせた。
「ナナシちゃん、大丈夫だから冷静にね」
「あ…はい」
そんなギャルソンを他所に、駅員が小さくナナシに声をかけると、少し不安そうに返事をして、ギャルソンの方へ歩み寄って行った。
「ギャルソンさん…あのね、さっきは」
気恥ずかしそうに喋りだしたナナシの表情は、会場を出て行った時の不機嫌そうな色は伺えない。むしろ、機嫌は良さそうにも見える。
何か言いたそうにもじもじとするナナシは、ずっと言いたかったある言葉を口にしようとした途端、それを言い終える前に腕に衝撃が走った。
「わっ…ちょ、と!どこ行くんですか!?」
驚くナナシの腕は、顔を上げたギャルソンの手が掴んでいた。
その瞳に精気が無く、ナナシの言葉を聞いていなかったのか、その手を無言で引き、無理やりにもその場から移動しようとしていた。
これにはナナシも困惑してしまったが、その様子を見ていた駅員が何も言わずに会場に戻るのを見て、観念したかのように付いて行ったのだった。
「あのー…」
店の奥にある一室。いつも二人で談話するその部屋へと連れて来られたナナシであったが、到着しても何も言わず、背を向けてナナシの手を握って棒立ちしているギャルソンに、恐る恐る声をかけた。
「…」
「お、怒っているのは分かるんですけど…私、謝りに」
「うるさいっ…!」
ぴしゃりと言って振り返ったギャルソンの目には、怒りが満ち溢れていた。
「痛っ…」
ギャルソンはナナシの言葉を否定すると同時に、ナナシの華奢な身体を壁際へと押し付け、覆いかぶさるように立ちはだかった。
「んんっ…!?」
そのまま力任せに口をつけ、驚いたナナシが身を捩るも、両頬を押さえられたその体勢では、拒否する事はままらなかった。
ナナシの口内をひとしきり味わうと、糸を引かせて唇を離したギャルソンは、焦燥感に駆られた表情でナナシを一心に見つめていた。
「…させませんから」
「っな、に?」
「あの人となんて…許しませんから…!私を見なさい!」
今までに見たことがない、ぎらついたその瞳に、ナナシは恐怖を覚えた。
悲痛なその叫びには、ナナシとはまた違った恐怖が伺えた。
「ぜ、絶対に許しませんから!私は手放す気なんてないんです、絶対に、絶対に…!」
ナナシが居ない間、ずっと怖かったのだ。
堰を切ったかのように言葉を発したギャルソンは、恐怖と焦燥入り混じる表情でナナシに訴えた。
「貴女は私がみつけたんです、渡すもんですか…!」
ずっと二人だけで居られるはずだったのに、突如現れた彼が全てを乱した。
限られた時間内であるが、ゆっくりと育んで来たこの関係。出会えたことに感謝し、ナナシの中に少しでも居る筈のない自分の存在を刻み付けていたかった。
「あの人と何を話したのです、何を見て何を共感した…?私がいるでしょう?悲しいときも辛いときも苦しいときも全部全部私が慰めるんです!私が!私だけがナナシさんを…!」
一晩にして初対面である彼がその場所を奪われてしまった、その喪失感に胸が痛い。
どんなに喧嘩していようが、ナナシの隣は自分でなければならない。他の誰でもない、この自分を彼女に見ていて欲しかったのだ。
「私を見なさいよ…私がいるでしょう…!他の男なんて許さないんですから…」
勝手と言われようが利己的と言われようが、そんな事は関係ないのだ。
ナナシの視線と気持ちは、一瞬たりとも取り逃したくなかった。そう思うと、胸の中はどす黒い感情で満ち溢れ、嫉妬以外の何ものでもないそれに支配されていった。
自分から離れていってしまいそうになるナナシに、詰め寄って思いの丈をぶつけたギャルソンは、目を丸くして自分を見つめるその視線に、次出てくるであろう自分を否定する言葉を想定していた。
「他の男?え、何ですかそれ…」
目を丸くしていたナナシは、最初は恐怖していたものの、ギャルソンの言葉を聞いていくうちに、首を傾げるようになっていた。
「あ、あれ?私にはギャルソンさんが居るはずなんですけど…?」
それもそのはず、彼女はギャルソンの思っているような別れや浮気など、微塵も考えていなかったからである。そもそも彼女のなかではほぼ恋人同士であると思っているのに。
あまりにも突然のことで何の話か理解出来なかったナナシ。しかし、話を聞いていくうちに、ギャルソンが何か勘違いしているのではないかと思い、恐る恐るその旨を伝えたのであった。
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