S&S.Halloween
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外に出て直ぐにある玄関前の石段に二人は腰掛けていた。
二人の姿を捉えたギャルソンは見つからないよう、店の中にある、石段が見える部屋から身を隠し、その様子が見える小窓へと移動した。
「何を話しているんだ…?」
様子を見る、もとい監視をしようと隠れたものの、デバガメみたいな真似をしている自分が酷く滑稽だ。しかし、四の五の言っている場合ではない。これ以上ナナシを辛い目に合わせるのが、心苦しかったのだ。
意を決してこっそりと覗き込むと、途端にその目つきを鋭くさせた。
「…へぇ」
視界に入った光景に、ギャルソンは塵屑を見るような視線を送った。
若干興奮気味に夜空を指差すナナシ。そしてその指に触れ、何かの形を描くように誘導し、隣に寄り添う駅員の姿。
どこからどうみても、仲の良い男女が天体観測をしているとしか思えない光景であった。
「何なのですかあれはっ…!私というものがありながら目の前でイチャつきよってからに!!万死に値します!」
ここにきて、ずっと蓄積されていた嫉妬の炎が爆発した瞬間であった。
この自分がここまで心配したというのに、星空の下他の男と元気そうに楽しく宜しくやっているなんて。どこまで自分の心配を裏切れば気が済むのだ。
そのあまりの大声に、二人がこちらを振り向いたのだが、慌てて身を隠すと、自ら口を塞いでやり過ごした。
「っ…ふ、二人で星座鑑賞ですって!?何てロマンティックな事しているんですか…それは今夜私がやろうと思っていたのに…!」
今夜の予定はさておき。
あまりに近い二人の距離に、とうとう堪忍袋の緒が切れたギャルソンは、窓枠に爪を食い込ませながらも、ここで割って入るなど恥じもいいところな為、そのまま二人を監視し続けたのであった。
「あんにゃろ近づき過ぎでしょ!もうちょっと離れなさい、しっしっ!」
それから10分弱。
相変わらずやっていることは一緒で、監視と嫉妬と声にならない叫びを繰り返していた。
届くはずのない小声と追い払うジェスチャーをするのだが、虚しくも二人の距離は開く事がなかった。
「見損ないました…こういう時だけ優しくしてくれる男に擦り寄るだなんて。浮気して気が咎めないなんてどんな神経し…」
ナナシの浮気性の酷さに、なんと性悪な女であると愚痴を零していた。
だが、考えてもみた。
「って、私達は友達でしたよね…」
そう、自分達は決して恋人関係にあるわけではないのだ。友達とも言えるかどうか怪しいが、友人関係というのが関の山だろう。
ナナシが他の何かに好意を持とうなら嫉妬に燃え、逐一阻止してきたが、それはギャルソンが一方的に束縛しているだけで、彼女はそんなことをされる義理もない。
そこまで想うなら愛を伝えればいいのだが、それを言うのが気恥ずかしく、一度だって愛していると伝えたことがなかった。いや、伝えた事はあったが、それは本心ではないと言い切ってしまったため、きっと伝わってはいないだろう。
「その人なんかじゃなくて、私が好きなんでしょう…?意地悪でも、何しても私のことが…」
少し前にそんなやりとりをした際、それでも好きだと言ってくれたナナシの言葉。嬉しくて、嬉しくて、あの日からずっと舞い上がっていた。
だから、慢心していたのかもしれない。
「…こっちを見て、ナナシ。私、ここに居ますから、寂しいなら応えてあげますから…」
ナナシの気持ちに応えてあげようともせず、恥かしくて自分の言葉を伝えてあげなかったのは、紛れもない自分。その優しさに甘え、彼女に全く応えようともせず、恋人でもないのに束縛し、その愛を独占していると勘違いした。
それがこの様だ。
(私達、お付き合いすることになりましたぁ♪)
(いやぁ、支配人さんがあのパーティーを開いてくれたから…感謝していますよ!)
「っ…」
恐ろしい。あの笑顔が、自分以外に向けられるのが、酷く恐ろしく思えた。
二人の幸せそうな顔を思い浮かべると、虫唾が走った。思い描きたくないそれは、二人して楽しそうにしているその光景を見つめるには、辛いものがあった。
ギャルソンは足を翻すと玄関の扉へ走っていき、慌ててドアノブに手を掛けるも、思うように手が動かない。
「…ナナシさん…っナナシさん…!」
扉を開けるのが、怖くて堪らなかった。こうしている間にも、彼女はどんどん自分から離れていっているのに。
扉に額を押し付け、声になっていない声でその名を呼んだ。
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