S&S.Halloween
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「…少しは忍耐がついたみたいですね。さて、謝ってきたらどう苛めてやりましょうか」
待つ間に飲んでいたグラスは既に空。ナナシにしては来るのが遅いとぼやきながら、さらに次のグラスに口付けた。
「…まさか怒られるのが怖いとか?これ以上待たせたらもっと怖いのです、さっさと謝りに来ればいいものを…」
二杯目が空になるのはそれなりに時間が経った証であったため、何となく空にするのが億劫になり、一口分を残してテーブルに放置していた。
あれから何曲かダンスのためのBGMが変わっているが、一向に自分の周りに誰かが来る様子はなかった。
「…怒らないであげましょうか、私ってばなんて優しいのでしょうね」
グラス二杯目は直ぐに空になった。三杯目はグラスを二つ、片方は甘いジュースの入ったグラスを持ってきた。
自分のためではない、泣きべそをかくであろう、誰かさんの為である。しかし、そのグラスの氷は既に半分以上溶け始めていた。
「本気で愛想つかされた…?…いやいやいや!そんなわけ、あるわけないじゃないですかぁ~またまたぁ~!…あはは…」
三杯目のグラスは全く減らなかった。減らない代わりに、延々と水面を揺らし続けていた。
それもそのはず、彼がグラスを握り締めながらあらぬ妄想に身を震わし続けているからである。しかし、これだけ挙動不審に待ち続けても、ナナシは姿を現さなかったのだった。
「む、迎えにいってあげましょうか?そうですよ、怖くて来られないのなら、私が迎え行くしかありませんね。ナナシさんも我侭言いたい時だってありますって、迎えに来て欲しいのですよ…うん、きっとそうですとも」
さすがにこれ以上待つことが出来なかったギャルソンは、独りぶつぶつと理由をつけながら、会いに行くのではなく迎えに行くという選択肢をとった。持っていたグラスをテーブルに置くと、直ぐさま席を立ち足を速めた。
ナナシがどこにいるのか、お化けを掻き分けながら慌てて探すと、いつもより愛らしいと感じ取っていたその姿は、思いの他直ぐに見つけることが出来た。
見つける事は出来たのだが、そこに寄り添うもう一人の人物に、目を見開いて息を呑んだ。
「なん…で」
血の気が引くと言える身体ではないが、見たくなかったその光景に、またギャルソンは裏切られた気持ちでいっぱいになった。
やっと見つけたナナシの姿。しかし、そこには身振り手振りで話すナナシと、楽しそうにその話を聞いている駅員の姿があった。二人が並んでいるだけで動揺したというのに、先ほどより明らかに仲が良さそうに談話しているのを目の当たりにし、今すぐ走って間に入って引き剥がしたい衝動に駆られた。
「い、いや…私から話しかけるなんておかしいでしょ。悪いのは向こうなんですから」
止めに入ろうと足を一歩踏み出したものの、ふと我に返って考えた。
彼のところへ行くと言っていたじゃないか。それに今ここで割って入ってどうするのだ。何を話す、何を言えばいい、今更謝れるわけがない、否、謝る必要がない。
話をふるのはナナシの方であると決め付けていたギャルソンは、前に進もうとした身体を止め、忌々しげに二人の姿を眺める事しか出来なかったのだった。
「って…あれ!?」
眺めるしかなかったのだが、それは二人が立ち上がって歩き出した事で動かざるを得なくなった。
「ちょ、ちょっとそこの二人!」
「へ?」
「…何ですか」
慌てて駆け寄り声を掛けると、半口空けて間の抜けた声を上げる駅員と、明らかに目が据わった不機嫌そうなナナシの返事が返ってきた。
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