S&S.Halloween
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「パートナーですよ。ダンスは一人でも出来ますし、貴女は彼と行けばいいじゃないですか」
「な、何言って…」
「待てと言ったのに待とうとしないナナシさんが悪いのですよ。ま、私は主催者ですし?他の方とご一緒する予定がありましたから、素敵なパートナーを見つけたなら、丁度いいですしその方と楽しめばいいじゃありませんか」
そう感じると、何故ナナシが知らない相手と練習などしたのか考える余裕がなくなる程、自分でも気付きたくないその感情に支配されていった。
感情に支配されたまま発した言葉は、決して本心ではなかったが、何故だか一番選んで欲しくない選択肢をナナシに突きつけていた。
「そんな…!」
また、言い過ぎてしまった。
いつも言ってから後悔するのだが、今回もまた、心にもない事を言ってしまった。ちらりとナナシを見れば、傷ついたのであろう、辛そうに顔を歪めているではないか。
だが、ここまで言ってしまった手前、ギャルソンも引くに引けなくなっており、そっぽを向いてもやもやとした心中、いつものようにナナシの優しい言葉を待っていた。
「私は…」
こんな時いつものナナシならば、そんなギャルソンの妙な意地を気にも留めず、悪くもないのに謝って、一緒に居て欲しいと言うであろう。
いつもそう、どんなにつっぱねても、彼女は受け止めてくれる。それを分かってしまっていると、ついつい冷たい事を言ってしまうのだ。
「…失礼します」
「もう、仕方がありませ…へ?」
仕方がない、一緒に踊ってあげよう。
そう返すつもりのギャルソンだったのだが、予想外の言葉に間の抜けた声を上げてしまった。
「え、ちょっと、どこへ?な、何言って…」
「駅員さんのところです。ギャルソンさんはそれでいいって言ったじゃないですか」
いつもとは違うナナシの硬い表情に焦ったギャルソンであったが、ナナシが反論することが気に入らなかったのか、むっとした表情で言い返した。
「あ、あのねぇ…元はと言えば貴女が待たなかったのが悪いのですよ?ナナシさんのくせに何で鵜呑みにしているのですか」
「…ギャルソンさんは私が誰と踊ってもいいって言うから。嘘でもそれは酷すぎます。何のために練習したと思ってるんですか」
いけない、これ以上ナナシを刺激してはいけない。かつて見たこと無いほど、目が据わっているではないか。
しかし、図星であるナナシの発言に、当たっていると言う訳がないギャルソンは、余計にその冷静さを失っていった。
「それではまるで私が貴女と踊りたいみたいじゃないですか。自意識過剰過ぎです、その自信はどこからやってくるのでしょうかね。あれだけ足を踏んでおいてよく言いますよ、こっちから願い下げです」
「…もういいです。その一言で分かりましたから」
「その口の利き方は何ですか!?こっちこそもういいです、さっさとどこへなりとも行きなさいな!」
「…」
今までとは違う彼女の表情。常日頃から口答えなどするはずのなかったナナシの返しに、思わず怒鳴ってしまったのだった。
ギャルソンの言葉と同時に、足を翻して会場の奥にナナシは消えていった。
「何なのですかあの態度!せっかく相手してやろうと思ったのに!」
少しでも言い過ぎたと思った自分が馬鹿だった。
相変わらず上から目線なのは治らないとして、ナナシのその態度に立腹したギャルソンは、腕を組んでそっぽを向いて悪態をついた。
こちらの騒ぎに気付いたギャラリーが見ていたが、微笑んで会釈すると、向こうも会釈して何事もなかったかのように去っていた。
「ま。あとは時間の問題ですけど?5分もすれば泣いて謝りに来ますから」
ただその表情には余裕があり、近くのソファーに腰掛けると、溜息をついて鼻で笑ってみせた。
先ほどのやりとりのためか、ギャルソンの周りには誰も近寄っては来なかった。これならばこの人数の中、ナナシが近寄ってくれば直ぐに分かるだろう。
何分で泣いて謝りに来るか、そして何と謝ってくるのか。想像しながら、ウェイターから貰ったグラスを仰いで待った。
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