S&S.Halloween
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今夜はハロウィン。この怪談レストランも漏れなくその日を祝う。毎年この店では沢山のお化けを集め、一年に一度羽目を外せる場を設けているのだった。
その中にたった一人招待された人間のナナシは、主催者であるギャルソンに呼ばれた…というよりも、強制出席させられたと言うのが正しいであろう。
(どうせこの日を一緒に祝うお化けも居ないでしょうし?仕方なくですが誘ってあげようと思いまして)
(クリスマスみたいなノリで言ってますけど結構な割合でお化けと祝う人は居ないと思いますよ)
(そうそう、ドレスコートを設けていますので。その短い足が少しでも長く見えるようなドレスを着てきなさい)
(ドレス!?そ、そんなの持ってるわけ…)
(夜七時に店の前で待機。…私を待たせたら、どうなるかご存知ですよね)
(重石乗せて正座は勘弁してください)
そんなこんなで、当日しっかりドレスを着たナナシはギャルソンに連れられ、このパーティーに出席したのであった。
「…すみませんでした」
「…こうなることは分かっていましたけど、いくらなんでも踏みすぎでしょう」
「こういうのは初めてで、その…」
ただ、このパーティーのメインであるダンス。一度もこういった場に出た事がないナナシが当然踊れるはずもなく、いざギャルソンに手を引かれて踊ってはみたものの、映画のように優雅な足取りとは程遠く、ギャルソンのぴかぴかに磨かれていた靴はナナシの足跡だらけになってしまったのだった。
大広間に設置されている椅子に二人で並んで座ると、ナナシはがっくりと肩を落としてしまっていた。
「端から運動神経がないのです。無理だったのは承知の上ですよ」
「これ以上へこませないで下さい…!」
「…。少し挨拶回りに行ってきます、ここで待っていなさい」
「うぅ…」
そうは言うものの、ギャルソンはそんなナナシを見て本気で責めようとは思っていなかった。
落胆しへこんでいるナナシに挨拶回りと言っては、彼女のために飲み物を取りに席を立った。
「待てと言ったのに…どこほつき歩いているのでしょうか…」
その帰り、数名のお化けに声を掛けられ、席に戻るのが遅れてしまった。
両手に飲み物を持って戻ったのだが、先ほどまでナナシが座っていた椅子には、既に違うお化けが腰掛けていた。眉間に皺を寄せながら辺りを見渡すと、やっと見つけたナナシの姿にギャルソンは目を見開いて驚いた。
「…誰ですあれは」
その姿に、思わず持っていたグラスに力が入った。
座っていたはずのナナシは踊り場の隅にいた。だが一人ではなく、ある男性と一緒だ。しかも居るだけでなく、その手を取ってゆっくりとではあるが、ぎこちなく踊っているではないか。
踊り場には何組かのお化けが居るため二人の姿は良く見えない。ギャルソンは持っていたグラスを隣にいたお化けにサービスをするフリをして渡すと、慌てて踊り場に駆け寄った。
「あれは…」
曲を無視してステップを踏むナナシ。そんな彼女の手を取り、何か喋っている男性には見覚えがあった。
青白い顔に眼鏡をかけ、真っ黒い制服と学生が被っていそうなキャップ、そして透けている下半身。あの世とこの世を定期的に往復している列車を動かしている、その人物。
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