S&S.Halloween
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「私はただ…頭冷やしに出て行っただけです。あれ以上一緒に居たら、ギャルソンさんと喧嘩しちゃうから…」
「…」
抱きとめながら、何故外へ出て行ったのか、素直に話すとギャルソンは鼻を啜りながら静かにその話を聞いていた。
「…嘘や冗談でも、あんなこと言って欲しくなかったですけど」
あの言葉は、ナナシの胸に傷をつけていた。
その一言に、ギャルソンはぴたりと泣き止むと、反省した様子でナナシと向き合った。
「ナナシさん…」
「はい?」
「その、すみませんでした…あれは言い過ぎました」
ギャルソンは真摯にそう言って顔を上げると、ナナシの真っ青な顔がそこにはあった。
何事かと首を傾げると、今度はナナシがぺこぺこと謝りだしたのであった。
「ごめんなさいごめんなさい!」
「な、何で貴女が謝るのです!?私が悪かったのに…」
「だって…ギャルソンさんが謝るなんてありえな」
「何か言いましたか」
「ナンデモアリマセン」
そういえば、彼女に謝ったことなどあっただろうか。
素直にごめんと言った事がなかったことを思い出しながら、失礼極まりないナナシの言葉に睨みを利かせた。
「…ふふ」
「やっぱ、いつものギャルソンさんがいいや」
「全くです、泣くなんて私らしくありませんでしたね…」
そして、睨んでいたはずの目と、ナナシの目が合うと、ようやく笑みが零れた。
ギャルソンは胸の中のもやもやとした感情が一気に晴れていくのを感じると、先ほど熱くなりすぎたことに気恥ずかしくなった。
これでようやく仲直りは出来たのだが、ギャルソンには気がかりな事があった。
「それで、その」
「はい?」
「何で彼と一緒に居たのかなぁと…気になっていると言いますか…」
喧嘩が鎮火しても、これは見過ごす事は出来なかった。
何故彼と居たのか、接点も関係も全く知らないギャルソンには、これだけが気になって仕方がなかったのだ。
「あぁ!駅員さんのことですよね!?本当に助けられたというか…」
「助け?」
すると、ナナシは思い出したかのように、彼との接点を話し始めた。
「ダンスのときから、ずっと私たちの喧嘩を見てたみたいで…あまりに酷かったんで、仲裁…というより、少し距離を置いて落ち着いて欲しかったから、外に連れ出してくれたんです」
「へ、へぇ」
「こういう喧嘩って、駅だとよくあるらしいですよ。仲裁上手なのかな?て、ていうか…本当に謝らなきゃいけない相手は駅員さんですよね…」
「…ごもっとも」
「あ、それとですね」
どうやら客に大迷惑をかけていたようだ。あれだけ恋敵と睨みをきかせてしまったことを恥じる。
ナナシのその説明を聞いたギャルソンは、お客様に気を使わせてどうするのだと思いつつも、胸を撫で下ろしたのだった。
そしてナナシは続けざまに、先ほど彼と二人で外に出た際に話したこと伝えた。
「駅員さん言ってました。きっとギャルソンさんは私に甘えているんだって」
「はぁ!?」
「私に甘えているから、無茶言っちゃうって。今まで耐えた甲斐がありま」
「それ以上言うなら彼のメガネの保障はありませんよ」
「人質!?いやメガじち?それからあと1つ」
「…なんですか」
一体何を話していたのだろうか。
浮気の類でなかったことは安心したのだが、まさか自分の話題で盛り上がっていたなんて。しかも有る事無い事、いや、当たっていることばかり喋っていたものだから、図星といわんばかりに大声を上げてしまったのだった。
「ギャルソンさんは、私が大好きだから色々意地悪な事を言ってしまうんだって…」
「…」
「喧嘩しちゃうのも私を想ってのことで、嫌いになったりしないから大丈夫だと言ってました。…嫌われてたらどうしようかと思っていたんですけどね…」
憶測で話してここまで当たるものなのだろうか。
大して親しくもない彼にそこまで言われる筋合いもないが、外れているとも言えないため、口を噤んで俯くしか出来なかった。
「い、今こうやって…絶対離さないって言ってくれた事…すっごく嬉しくて」
「さっきのは…あまり喜ばしい話ではなかったはずですが…」
「ううん!そんなことないです!私は嬉しかったの!」
「あっ…貴女、よくそうやって恥かしげもなく言えますね…」
あんなに醜い自分を見せてしまったのに、何故嬉しそうなのだろうか。
そう嬉しそうに話すナナシに、先ほどの自分の病んだ言動を思い出してみるが、忘れてしまいたいほどの醜態である。
しかし、それすら嬉しいと応えてくれる彼女を不思議に感じながら、心の奥底で愛しさが溢れかえっていくのが分かった。
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