よろこびのうた
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「大丈夫ですか」
そう声をかけても、彼女は唯々泣きじゃくるばかり。
まるで誰か死んだかのように、辛そうに、悲しそうに、泣くのです。
「さあさあこちらへ」
泣きじゃくる彼女の背を抱き、中へと通すと、私に抱きついては大声を上げた。
何がそんなに悲しいのか、何がそんなに彼女を苦しめているのか。
「どうしたのですか、ナナシさん」
私は、知っている。
「泣いてばかりじゃ分かりませんよ」
唯、彼女の口からはっきり聞かなければ。
「涙を…いや、全て拭いて差し上げますから」
この胸の高鳴りが、確信を持つことが出来ない。
早く、早く。その末路を口にして御覧なさい。
「…駄目、でした…っ」
やった。
「それは…残念でしたね」
やった、やった、やった。
「ここで静かに成功を祈っていたのですが…本当に残念です。お似合いだと思っていたのですが…」
嘘、嘘、嘘。全くそんな事思っていませんよ。
全く思ってもいないことを平気で口走ると、口元がにやけるのを必死に押さえた。
「今は沢山泣いていいですから、私でよければ胸を貸しましょう」
もしも許されるのならば、今この場で、歓喜の声を上げてしまいたい。
彼女の胸は張り裂けそうな程辛いだろうに、それでも私は笑いが込み上げてくる。何て素晴らしい日だろうか、外の大雨が、私達を祝福しているかのようにも見えてくる。
「彼には見る目がなかったのですよ。本当に馬鹿ですね、こんなに素敵な人間を選べないとは…」
毎晩彼の話をしていた彼女の笑顔に、何度憎悪を抱いただろうか。
その話のたびに、何度作り笑いを浮かべてしたくもないアドバイスをしただろうか。
嫉妬と憎しみしか感じられない毎夜に、うんざりしていたんです。
「大丈夫ですよ、ナナシさんにはね」
でも、それもこれで終わり。
今日からは、彼女を毎晩私の言葉で慰めるのだから。
「ナナシさんには、必ず素敵な人が現れますから」
私が居る。そう、分からせてみせる。
「ほん、と…?」
「もちろん。私の霊感は当たるのですよ?ですが…まずは身体を拭きましょう?風邪を引いたら大変ですよ!」
「…うん」
あと何日だろう、彼女の口が私の事しか話さなくなる日は。
そう思うと、やはり笑いが込み上げてきた。
fin.
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