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「っぇ…あ、ぅ…!」
「言葉もまともに喋れなくなりましたか。いつか来るとは思っていましたけど」
「…」
9割が辛らつな言葉の彼が、余韻を味わう暇を与えるわけがなかった。
「ああ、そうそう。来た時から言おうと思っていたのですが」
先ほどまで口を付けていたとは思えないほど態度を変え、まだ冷ややかな視線を送る彼は、次に彼女の服を指差した。
「こんな服を着て、自分に色気があるとお思いなんですか?胸もあるわけでもないのに…正直言って似合いませんよ」
「…そんなに似合いませんか…?」
「ええ。私の視界に色気もへったくれもないものが見え隠れしながら映り込むような大きさの服は似合わないと思いますよ」
簡単に重ね着した夏服は、とりたてて彼の言う露出の高い服ではない。しかし、彼女の身長では彼の高さから見れば服の中が見えていたらしい。
彼女は先ほどの余韻を完璧に忘れ、慌てて服の襟を直すも、彼のきつい指摘に落ち込んでしまう。
「す、すみません…」
正直言えば、この服が気に入っていたのだ。気に入ったと言うのも、彼が好んでくれそうなイメージをこの服に持ったというのが理由なのだが、彼に駄目出しをされては意味がない。
そんな彼女のささやかな好意は、彼に届く事はないのだろう。
「貴女のなんて見せつけても誰も寄って来ません。無意味です。無価値です。総じて見せる必要がありません。見ているこっちが恥ずかしいです。」
「はい…」
ここまで他人に駄目出しをする人物はそうそういないだろうが、その後も彼はお構い無しに彼女の好みと、彼女自体を全否定していった。
終始涙ながらに頷き、彼の有り難いお言葉をしっかりと聴いている彼女に対し、彼は再度哀れみの視線を落とした。
「色気もファッションセンスも皆無なナナシさんが可哀想で仕方が無いので、一つアドバイスして差し上げましょう。どんなに暑かろうがなんだろうが肌は出さないこと。まあ、ここに来る時だけはそういう恥ずかしい格好していても、私しか見る者はいないでしょうからいいですけど。外では着ないほうが羞恥の塊でいなくて済みますよ。まぁ、その服をどうしても着たいと言うならば、ここに来るときだけにしなさい。毎回酷い所を指摘して差し上げますから。」
「…」
また着て来たら、心を粉砕される。彼女がこの服を着ることは二度とないだろう。
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