BorW
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「貴方とギャルソンさんは違います。そ、そりゃ貴方と違ってこんな大胆なことしないかもしれないけど…それは意気地なしなんかじゃないし、それがギャルソンさんの優しさなんですよ」
赤面していたはずのナナシの真剣な表情に目が離せなくなる。先ほどまで意識されていたはずが、形勢逆転で今は闇のギャルソンがナナシの言葉を意識してしまう。
「私は、そんないつものお化けギャルソンさんが一番好きです」
「なっ…」
「ナナシさん…!」
「それに…」
予想外のナナシの反応に、とうとう表情に出して驚いてしまった闇のギャルソン。
幽霊と人、仲良くなる機会などごく稀にしかない。しかし、ナナシはそんな溝や垣根を越えて理解し、一人の存在として認めてくれているのだ。その事実に驚かされた闇のギャルソンは、はっきりとお化けギャルソンがナナシを気に入っている理由を感じ取っていた。
「それにね、やっぱり可愛いから…ほら、ふわふわでぎゅーってすると気持ちいいですし!」
「嗚呼!そう言って下さると信じていました…!このやわらかさは貴女の為なんですよ…!」
それまで真剣だったナナシの顔は、直ぐ横に居たお化けギャルソンを見つめると柔らかく優しい表情へと変化した。やっとナナシと目が合ったお化けギャルソンは、嬉しそうに彼女の腕の中へと飛び込んでいく。
ぎゅーっと抱きしめながら話すナナシであったが、楽しそうに抱きしめる彼女の表情には愛や恋などの色は無く、確実に小動物を愛でる目つきそのもの。それでもナナシに抱きしめられているお化けギャルソンは、何よりも幸せそうな顔つきでナナシの胸に顔を埋めて頬擦りしているではないか。
先ほどまで感動に驚かされていた闇のギャルソンも、この情景を見てはその感動も消えうせてしまう。
「…それでいいのか貴方は」
彼には彼なりの幸せがあるのだろう。これが自分の半身であると思うと頭が痛くなってしまうのだった。
「大体、ギャルソンさんに下心とかあるはずないですもの。ね?ギャルソンさん!」
「ええ、そうですとも!こうやってナナシさんと一緒に居るのが幸せなんですから」
「ふふふ!」
「んふふ!」
「…おやおや、私の入る余地は無し、ですか」
二人を見て闇のギャルソンは、改めてこの二人の絆に目を細めた。
(少しからかってやろうと思っていただけなのに、少しも振り向いてくれないとはね)
小さく芽生えた嫉妬心。同じ存在のはずなのにこの待遇の違いは二人の過ごしてきた時間から生まれたものなのだろう。分かっているのだが、それはそれで少し腹が立ってくる。
ややあって二人のやり取りを見つめていた闇のギャルソンは、仕方ないと言わんばかりにため息をついた。
「…奥の手といきますか」
そう呟き、すくっと立ち上がって二人の前から一歩引いた闇のギャルソン。
その場で飛び跳ねたと思いきや、そのまま一回転して着地したときには彼の姿は一変していた。
「ほーらナナシさーん、私も十分可愛いですよー」
「あ、あれ!?」
「あ!ちょ、ちょっと!貴方まで一緒の姿になってどうするんですか!」
「だってこうでもしないとナナシさん構ってくれないですから」
白くてふわふわと浮いたポップな形。その姿はお化けギャルソンそのものである。
ほらほら退いた退いた、そんな事を言いながらお化けギャルソンを押しのけ、ナナシに抱きついてきた闇のギャルソン。奥の手、即ち自分も一緒に可愛い姿になってナナシの気を引くという強行手段だ。
傍から見ればどっちがどっちだか分からないが、ナナシにとっては可愛い存在が二つに増えてちょっと嬉しい出来事である。
「すごい!闇のギャルソンさんもお化けになれるんですね!」
「ええ、そうですとも。やろうと思えばなんでも出来ちゃんですよ。だから可愛がっていいですよー」
「わーい!」
「え、え…」
ナナシが喜ぶのもつかの間。とある危機を察したのはお化けギャルソンである。
「あ、貴方、まさか…」
先ほどまで自分が居た場所に居るもう一人の自分。同じ自分だから分かるその思考。
「やろうと思えば何でも…独り占めは良くないです。ですが共有する気も無いですから、これから覚悟して下さいね」
気付いてももう遅い。そう言わんばかりににんまりと笑った闇のギャルソン。
自分を相手取り、かつて無い火蓋を切る事となったのだった。
fin.
6/6ページ
