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「兄弟ではないんですけどね、彼と私は血ではなく魂を分けた存在…元々は一つの魂なのです」
「生者には理解しがたいかもしれませんが、強い念や気持ちでこの世に留まることの出来る私たちです。こころざしを分けて分裂したと言えば判り易いのでしょうか…」
「とにかく『人々に怖い話をお届けしたい私』と」
「『闇のレストランで人々を見送る私』で」
「「分譲した魂なんですよ、ナナシさん」」
交互に喋る彼らに目を丸くし、簡潔で深い説明を必死に脳内で整理する。つまりだ、この二人は同一人物ではあるが、一つの魂を割って存在しているらしい。
「き、器用なんですね、ギャルソンさんは…」
素直にその感想しか出てこなかったナナシ。理解しがたいというより、想像の範囲を超えていたため、こんな薄っぺらな言葉しか出てこなかったのだ。
いつも仲良くしていたお化けギャルソンの素性を知り、若干混乱してはいるが、幽霊と言うのは実に便利な機能を兼ね備えているのだと感心した。
すると、二言返事で返したナナシに対し、直ぐに反応を返したのは闇のギャルソンであった。
「いやあ、ナナシさんは物分りがいい上に飲み込みも早いですね。てっきり困惑したりするかと思っていたのですが、我々のような存在を理解して下さるなんて…こんなに素敵な方でしたら、もっと早くお知り合いになりたかったですよ、ほんと」
「え!い、いや…その…」
目を細めて柔らかな声でそう言うと、闇のギャルソンはナナシの手をそっと握り、嬉しそうに微笑んだ。
初対面とは言え、その声も物腰もお化けギャルソンそのもの。普段絶対に言われないその言葉に照れを隠せないナナシは、どうしていいのかも判らず目を泳がせることしか出来なかった。
「あ、あんた何してるんですか!?その手退けなさい!しっしっ!」
「おや?そんなこと言う資格がお有りで?」
「は?」
「私は一人きりであそこを経営しています。当然友達が出来るはずも一緒に楽しい時間を過ごす素敵な女性と巡り会うはずもない」
突如として冷徹な眼光でお化けギャルソンを見つめた闇のギャルソン。相変わらず冷たい手はナナシの柔らかい手を握ったままだ。
「それを知っての上でばんばん友達作って何の連絡も寄越さないで自分だけこんなにいい思いしてるなんて、私ってそんなに薄情者でしたっけ?」
「う…それは、その…」
「…まあ大方貴方の知らせたくなかった理由は分かりますけどね。ナナシさんのこと本当は」
「わー!!」
今日のお化けギャルソンは叫んでばかり。冷静に二人のやりとりを見つめていたナナシはそう思った。
段々と冷たくなっていく自分の手を心配しつつも、闇のギャルソンは連絡を寄越さないお化けギャルソンの事が気になってここに来たらしい。闇のレストランとはどういうところなのだろうか、少なくとも自分が知っている怪談レストランよりも静かで寂しい場所なのかもしれないとナナシは考える。
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