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あの時のことを思い出し、しばらく涙を流していたナナシは何日目か分からない夜を迎える。
「ナナシ」
先ほど頑丈に閉ざされた扉から声が聞こえる。
「はい」
小さく返事をすると、錠の意味を打ち消すように扉をすり抜けてギャルソンが部屋へと入ってきた。
「また泣いていたのですね」
「…」
しょうがない人だ、そう言いたそうな顔をしてナナシの横に腰掛けると、ギャルソンはゆっくりと腕を回して自分の胸の中に抱き寄せた。
「泣く事はないのですよ、私は貴女を許してますから」
穏やかに、そして嬉しそうに呟くギャルソンの声を聞いた。
だけど、私は分からない。
「あんな風に私の前で男と話して」
彼は私を許しているのか。
「私以外の男に色目を使って」
彼が私を許そうとしているのか。
「私の想いを踏みにじる最低の行為でしたが」
私は償えているのか。
「怒ってませんよ。ですが、私の心はとても傷つきました」
私には。
「だから、ずっとここに居てくださいね」
もう、彼が元に戻る事はない。
それしか、私には分からない。
fin.
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