It compensates.
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「クラスメイトの…もしもし?」
『…あ、無名さん?僕だけど、アドレス間違ってたみたいで送れなくて…』
「あれ!本当?ごめん…どこ間違ってたのかな…?」
ギャルソンに諭され、恐縮しながら部屋を出たナナシ。廊下で携帯に耳を当てると、学校の友人からの電話だった。
その友人と言うのも、つい最近知り合ったばかりの男の子。今日アドレスと番号を渡したのだが、間違っていたためメールが送れなかったらしい。申し訳なさそうに口頭でアドレスを伝え、ギャルソンを待たせているナナシは出来るだけ早く切ろうとしたのだが、友人は知る由もなくそのまま言葉を繋げた。
『なんていうかさ、無名さんと前から話したかったから嬉しくてさ…もう少し話しない?』
「え!あ、ありがとう…私もお話ししたいと思ってたんだけど…」
『明日なんだけどよかったら』
何気ない友人の一言が嬉しいのだが、今は優先すべき人がいるのだ。当たり障りの無い言葉を繕い、どうにか電話を切る機会を伺った。
こちらの都合などお構いなしといった口調の友人に対し、どう切っていいか焦るナナシ。すると、何気なく振り返った背後にはギャルソンの姿があり、部屋から出てきたのか音も無く立ち尽くしているではないか。
もしかしたら長電話が嫌だったのだろうか、慌てて友人に掛け直すときっぱり言おうとするも、白い手が伸びてきてはナナシの携帯を力強く奪い取った。
「ギャルソンさん?」
「…」
予想外の行動にあっけに取られていると、ギャルソンはそのまま携帯を耳へ持って行き無表情で受話器から聞こえている声を聞いていた。
彼が今何を考えながらそれをしているのか検討もつかないナナシは、ただ見つめることしか出来ない。
めきめきと聞こえ割れるディスプレイも、目の前で携帯を半分にへし折るその手も、床に部品を落として飾ってあった花瓶で何度も叩きつける姿も、一連の行動を見つめる事しか出来なかった。
色んな事を考えるより先に、携帯の中身はこうなっているのか、としか考えられなかった。
「あ、」
今ナナシの存在に気づいたかのようなその声色で顔を上げたギャルソン。
持っていた花瓶はとっくに割れており、割れた破片は血の滲むことの無い白い手を裂いている。花瓶の破片と携帯の破片は混ざり合い、何の形をしていたのか分からないほどになっていた。
.
