誰だ!
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その日、いつもの様にレストランへ入ると、笑顔で出迎えてくれたギャルソンさんの顔は、突如として般若の様な形相へと変貌した。
見た事のないギャルソンさんの表情と、感じたことの無い恐怖が私を震え上がらせる。
殺気というのだろうか、ギャルソンさんはこちらを睨みつけてはドスの効いた低い声で口を開いた。
「そいつは誰ですか…」
そいつ、と言われて誰か居るのかと思い、後ろを振り返って見るも、今開けたドアと外へとつながる道しかない。
こんなに怖い顔のギャルソンさんに口答えするのは物凄く怖いが、理由がわからない事には話は進まない為、恐る恐る私も口を開いた。
「あの、な、何のことですか…?」
私の質問に、恐ろしい形相のまま身を震わせて怒りだしてしまい、更に事態を深刻化だせてしまったのだと後悔するも、それはもう後の祭り。
「…その男は誰だと聞いているんです」
「だから誰のこ」
「よく私の前で堂々と抱き合えますね?なんですか新しい人を連れてお別れに来たのですか?ナナシさんがそんな人だとは思わなかったですよ顔が良けりゃいいんですか昨日あれほど抱き合ったばかりなのに一日経っておいそれと新しい彼ピッピ連れてきましたとかどういうことなんですか今更別れるなんて私絶対しませんよ約束したんですから今更破るとかさせませんからね死んでも貴女は私のものだと言ったじゃないか」
「話」
「てかそいつどこの馬の骨ですかちょっと表で話つけたいんですけどいいかな君表出ろ表」
「…聞いてください!!」
こんなに大きな声を出したのなんて本当に久しぶりだ。
私の大声で我に返ったギャルソンさんは、目を白黒させながらこちらを見つめた。そして直ぐに悲しそうで辛そうな表情になり、私から目線を逸らしては俯いてしまうのだった。
「ギャルソンさん…!本当にどうしちゃったんですか!?さっきから何の話をしているんです!?」
「この期に及んではぐらかすなんて…ナナシさん、酷いじゃありませんか…」
実はからかわれているのではないかと思ったが、あまりに辛そうなその表情にやはり本気なのだと確信をして、改めて辺りを見回したがやはり私達2人しかいないのだ。
「だ、だから!その、男の人って何のことなんですか?私とギャルソンさん以外居ないのに何を言ってるんです…」
「え?」
この質問をようやく受け入れてくれて、今日も素敵なアイシャドーの入った瞼をパチパチさせていた。
私とその後ろの何も無い空間を見比べて、しまった!という顔をし始める。今日は今までに見た事の無い顔のギャルソンさんが見ることの出来た凄い日だと思いつつ、やっといつものギャルソンさんに戻ったのだと安心したのだった。
.
「あ…あー!いや、も、申し訳ない!いや本当に…あぁ!でも!すみません…」
ややあって焦りと照れと何だか色んな顔をするギャルソンさんに、思った以上に表情豊かな人なのだと上の空で考えていた。
「本当にどうしちゃったんですか?怖かったですよ…」
「いや、えっと…と、とりあえず。君、いい加減離れなさ…は?…すまないがよく聞こえませんでしたねぇ…いいから…」
何が起きているのか全くもって私には分からないけれど、また怖い顔のギャルソンさんに戻ってるのは確かな事。
私の後ろに何か見えないものでも居るかのように振舞い、再びドスの効いた声で独り言のように何かを話すと、何故だかふと肩が軽くなったような感覚に見舞われた。
ギャルソンさんは暫くドアを見つめては犬や猫でも追い払うようなジェスチャーをし、若干放心気味に手をぶらぶらとさせてそのまま立ち尽くしてしまう。
「あの…ギャルソンさん?」
「…」
「あのー…うあっ」
「…」
心配になった私が小声で話しかけると、そのまま無言で私を抱きしめては溜め息混じりに頬擦りをしてきた。忙しい人だと思いつつも、少しひんやりとした肌が気持ちよくて、黙って目を閉じて抱きしめてもらう。
本当になんだったのだろう…そんな私の疑問に答えるかのように、バツが悪そうな顔でギャルソンさんは話し出した。
「その…さっきは本当にすみませんでした。ナナシさんには見えてなかったんですよね…」
「見え…何か、居たんですか?」
「そりゃあ顔の良い青年の霊が貴女に頬擦りまでしながら抱きついてました…」
「…」
そういえば最近肩が重いような気がしないでもなかったかな。
「つい誤解をしてしまいました…ナナシさんはそんなことするはずないのに。謝っても謝りきれないです」
いや怖い。いやギャルソンさんの怒り方も怖かったけど、背後霊に何かされてたという心霊体験に恐怖心が湧き出てくる。逆に考えて今ギャルソンさんとこうしているのも立派な心霊体験かもしれないけれどそこは突っ込んではいけない。
「い、いいんですよ!見えなかった私が悪いんですし、ね?追い払ってくださってありがとうございます」
「そう言って頂けると心が軽くなります…そうですよ、ナナシさんが浮気なんてするはずないのに…」
「あ、あはは…」
浮気相手も幽霊だったらそれは人類初の浮気者なのかもしれない。
そんな事口が裂けても言えるはずない私は、今は安堵の表情を浮かべているギャルソンさんをフォローする言葉しか出なかったのだった。
「ですが」
「はい?」
「…ちょっと用心が足りなさ過ぎましたね…生身の人は祟ったり呪ったりできるけど…塩でも持たせようか、いや私まで近づけなく…うーん…」
「の、呪うって」
ぶつくさ顎に手をおいて考え始めたその姿に、まだ知らない一面がありそうだと確信した。
「ああ、気のせいですよ。…まぁ、霊だからってナナシさんに近づくなら容赦しませんけど。んふふ」
そこは笑う所なのだろうかと冷や汗が出てしまう。だけれどさっきの怒ったギャルソンさんを見て、何となく嬉しくなってしまったのはいけない事なのだろうか。
「っわ」
「さーて、先程は身に覚えのない事で貴女を怒鳴ってしまいましたし、何か埋め合わせしなければですよねぇ」
「いえそんな…って何で担ぐんですか…!?降ろして下さい…!」
「いえいえ、これも埋め合わせのうちです」
「そんな!」
「相当怖かったでしょう…今後の虫除け対策講座と私の精一杯の埋め合わせ、奥の部屋で朝までじっくりご堪能下さい。」
「朝!?」
今日は帰れそうにありません。
fin
見た事のないギャルソンさんの表情と、感じたことの無い恐怖が私を震え上がらせる。
殺気というのだろうか、ギャルソンさんはこちらを睨みつけてはドスの効いた低い声で口を開いた。
「そいつは誰ですか…」
そいつ、と言われて誰か居るのかと思い、後ろを振り返って見るも、今開けたドアと外へとつながる道しかない。
こんなに怖い顔のギャルソンさんに口答えするのは物凄く怖いが、理由がわからない事には話は進まない為、恐る恐る私も口を開いた。
「あの、な、何のことですか…?」
私の質問に、恐ろしい形相のまま身を震わせて怒りだしてしまい、更に事態を深刻化だせてしまったのだと後悔するも、それはもう後の祭り。
「…その男は誰だと聞いているんです」
「だから誰のこ」
「よく私の前で堂々と抱き合えますね?なんですか新しい人を連れてお別れに来たのですか?ナナシさんがそんな人だとは思わなかったですよ顔が良けりゃいいんですか昨日あれほど抱き合ったばかりなのに一日経っておいそれと新しい彼ピッピ連れてきましたとかどういうことなんですか今更別れるなんて私絶対しませんよ約束したんですから今更破るとかさせませんからね死んでも貴女は私のものだと言ったじゃないか」
「話」
「てかそいつどこの馬の骨ですかちょっと表で話つけたいんですけどいいかな君表出ろ表」
「…聞いてください!!」
こんなに大きな声を出したのなんて本当に久しぶりだ。
私の大声で我に返ったギャルソンさんは、目を白黒させながらこちらを見つめた。そして直ぐに悲しそうで辛そうな表情になり、私から目線を逸らしては俯いてしまうのだった。
「ギャルソンさん…!本当にどうしちゃったんですか!?さっきから何の話をしているんです!?」
「この期に及んではぐらかすなんて…ナナシさん、酷いじゃありませんか…」
実はからかわれているのではないかと思ったが、あまりに辛そうなその表情にやはり本気なのだと確信をして、改めて辺りを見回したがやはり私達2人しかいないのだ。
「だ、だから!その、男の人って何のことなんですか?私とギャルソンさん以外居ないのに何を言ってるんです…」
「え?」
この質問をようやく受け入れてくれて、今日も素敵なアイシャドーの入った瞼をパチパチさせていた。
私とその後ろの何も無い空間を見比べて、しまった!という顔をし始める。今日は今までに見た事の無い顔のギャルソンさんが見ることの出来た凄い日だと思いつつ、やっといつものギャルソンさんに戻ったのだと安心したのだった。
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「あ…あー!いや、も、申し訳ない!いや本当に…あぁ!でも!すみません…」
ややあって焦りと照れと何だか色んな顔をするギャルソンさんに、思った以上に表情豊かな人なのだと上の空で考えていた。
「本当にどうしちゃったんですか?怖かったですよ…」
「いや、えっと…と、とりあえず。君、いい加減離れなさ…は?…すまないがよく聞こえませんでしたねぇ…いいから…」
何が起きているのか全くもって私には分からないけれど、また怖い顔のギャルソンさんに戻ってるのは確かな事。
私の後ろに何か見えないものでも居るかのように振舞い、再びドスの効いた声で独り言のように何かを話すと、何故だかふと肩が軽くなったような感覚に見舞われた。
ギャルソンさんは暫くドアを見つめては犬や猫でも追い払うようなジェスチャーをし、若干放心気味に手をぶらぶらとさせてそのまま立ち尽くしてしまう。
「あの…ギャルソンさん?」
「…」
「あのー…うあっ」
「…」
心配になった私が小声で話しかけると、そのまま無言で私を抱きしめては溜め息混じりに頬擦りをしてきた。忙しい人だと思いつつも、少しひんやりとした肌が気持ちよくて、黙って目を閉じて抱きしめてもらう。
本当になんだったのだろう…そんな私の疑問に答えるかのように、バツが悪そうな顔でギャルソンさんは話し出した。
「その…さっきは本当にすみませんでした。ナナシさんには見えてなかったんですよね…」
「見え…何か、居たんですか?」
「そりゃあ顔の良い青年の霊が貴女に頬擦りまでしながら抱きついてました…」
「…」
そういえば最近肩が重いような気がしないでもなかったかな。
「つい誤解をしてしまいました…ナナシさんはそんなことするはずないのに。謝っても謝りきれないです」
いや怖い。いやギャルソンさんの怒り方も怖かったけど、背後霊に何かされてたという心霊体験に恐怖心が湧き出てくる。逆に考えて今ギャルソンさんとこうしているのも立派な心霊体験かもしれないけれどそこは突っ込んではいけない。
「い、いいんですよ!見えなかった私が悪いんですし、ね?追い払ってくださってありがとうございます」
「そう言って頂けると心が軽くなります…そうですよ、ナナシさんが浮気なんてするはずないのに…」
「あ、あはは…」
浮気相手も幽霊だったらそれは人類初の浮気者なのかもしれない。
そんな事口が裂けても言えるはずない私は、今は安堵の表情を浮かべているギャルソンさんをフォローする言葉しか出なかったのだった。
「ですが」
「はい?」
「…ちょっと用心が足りなさ過ぎましたね…生身の人は祟ったり呪ったりできるけど…塩でも持たせようか、いや私まで近づけなく…うーん…」
「の、呪うって」
ぶつくさ顎に手をおいて考え始めたその姿に、まだ知らない一面がありそうだと確信した。
「ああ、気のせいですよ。…まぁ、霊だからってナナシさんに近づくなら容赦しませんけど。んふふ」
そこは笑う所なのだろうかと冷や汗が出てしまう。だけれどさっきの怒ったギャルソンさんを見て、何となく嬉しくなってしまったのはいけない事なのだろうか。
「っわ」
「さーて、先程は身に覚えのない事で貴女を怒鳴ってしまいましたし、何か埋め合わせしなければですよねぇ」
「いえそんな…って何で担ぐんですか…!?降ろして下さい…!」
「いえいえ、これも埋め合わせのうちです」
「そんな!」
「相当怖かったでしょう…今後の虫除け対策講座と私の精一杯の埋め合わせ、奥の部屋で朝までじっくりご堪能下さい。」
「朝!?」
今日は帰れそうにありません。
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