扉
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言葉にしようとするのに、何かが私の口をつぐむ。
事実を口にするのに、私に嘘などないのに、何故なのだろう。
おかしい、どこか嘘をついているのだろうか。
「私はナナシさんに感謝しただけです、ナナシさんに話をしただけ、ただ楽しんでもらいたくて」
本当に?
「ナナシさんに話をして」
傍に居た彼女に話しかけていただけ?
「…違う、違うのです」
一言呟くたび、胸の奥から痛みと共に、何かが問いかけてくる。
だってそうだ、嘘を言っているのは私自身なのだから。自分に嘘をついていれば、すぐに嘘だと分かる。
知ってしまったのだ。彼女が帰った後
「寂しいという気持ちを」
思ってしまったのだ。彼女が傍に居るとき
「ずっとここに居て欲しいと」
分かっていたのだ。彼女を見つめていた際
「住む世界が違いすぎることに」
偽っていたのだ。彼女の笑顔を見るたびに
「私はそれでも、ナナシさんのことが」
うずくまっていた私はやっと立ち上がった。
走らなくても通り抜けられるはずの部屋の扉を慌てて開けて、小走りのまま玄関の扉を勢いよく開けた。
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