扉
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一人きりになった部屋には残り香りがする。甘くて優しい、彼女の香り。
しかし今はそれを鼻腔に感じるたび、ずきずきと胸に痛みを伴わせた。
自分の肩に触れると、あの時の温かさが蘇る。とても、とても温かかった彼女の手が触れた、この肩。
「…何故触れたのですか」
力を込めて肩を握っても痛みは感じない。何も感じないはずなのに、彼女の温かさだけが残っている。
触れられたあの瞬間、私は焦っていたのだ。
嬉しくて、嬉しくて、もっともっと近くに欲しいと願って、そしてもっと彼女に、
「それ以上、これ以上知りたくない…!」
自分で自分の心の口を塞ぐ。だめだ、これ以上、喋っては、考えてはいけない。
何も聞こえない部屋で、耳を塞ぎうずくまる。
先ほどまで二人で話していた椅子、飲んでいた紅茶、彼女のために用意したひざ掛け。今まで彼女のために話を続けてきたこの部屋。長い間暗闇の中過ごしていた私に、光を運んでくれた彼女。私はただ恩返しのために、少しでも退屈な日々に光をくれた彼女のため、話をしていただけ。
「私は、私はただ」
.
